人は誰もが夢を持つ。成し遂げたいことや、なりたい自分になるために。大人は「そんな夢みたいな事を言っていないで早く現実に戻れ」と“したり顔”で言う。「どうせそうならないのだから」と。

でも夢を実現できる者もいる。夢を持ち続けていたから。

カタールW杯のアルゼンチンチームに、そんな男がいる。フリアン・アルバレス。2000年1月31日生まれ、22歳。昨年の南米年間最優秀選手で、今はヨーロッパのビッグクラブ、マンチェスターシティに所属している。

【映像】憧れの選手から戦う仲間へ アルバレスはメッシのために戦う

ある意味W杯のピッチに立っている選手は全員が「夢を実現した」者たちかもしれない。でもアルバレスは特別だ。

サッカー少年誰もが夢見たように、15歳のアルバレスも憧れの選手とプレーすることを夢見ていた。それはリオネル・メッシ。その証拠であるメッシとの記念撮影の写真を彼は自分の夢の証として持ち続けていた。

あれから7年後。彼の夢は叶い、7年前に15歳だったアルバレス少年は、アルビセレステ(選ばれた水色と白の意=アルゼンチン代表ユニフォームの愛称)の9番を背負い、メッシのボールを追い、メッシにボールを渡し、そしてメッシと一緒に走り、アルゼンチンのために戦うピッチに立っている。

ラウンド16のオーストラリア戦。メッシの先制ゴールに続いて、彼自身2試合連続のゴールを決めた。7年間メッシを追いかけ、自身の夢を追いかけたように、オーストラリアのボールを追いかけ、GKへプレッシャーをかけて自分の元へボールを呼び込みそしてゴールにボールを蹴り込んだのだ。

メッシにそのゴールはどう映っただろう?

今大会のアルゼンチンは今までとはどこかが違う。W杯最後のメッシのために、チームが一丸となって動いているように見えるのだ。今まで以上に敵にプレッシャーを与え、今まで以上にボールを追いかけ回している。それもアルバレスのような選手がいればそれも腑に落ちる。その一瞬一瞬が彼にとって夢の時間だから。

「人は誰でも夢を持つ」

アルバレスを見ると、そんな聞き慣れた言葉が特別な意味を持って聴こえてくる。


(ABEMA/FIFA ワールドカップ カタール 2022)