アルゼンチンとのPK戦でオランダが敗戦、一番手のファン・ダイクは失敗

 8万人を超える大観衆のブーイングを浴びながら、右足で力強く蹴ったボールは、無情にもアルゼチン代表GKエミリアーノ・マルティネスに弾かれた。カタール・ワールドカップ(W杯)準々決勝でオランダ代表は、アルゼンチンと対戦。FWリオネル・メッシの1得点1アシストで2点のリードを許したが、オランダも終盤に追い付き、試合の決着はPK戦に委ねられることになった。

 先攻のオランダの一番手として登場したのが、世界最高のDFとも称されるDFフィルジル・ファン・ダイクだった。日本もラウンド16のクロアチア代表戦(1-1/PK1-3)にPKで敗れたため、その際に選手たちに立候補を求めた順番の決め方が論争の的となったが、DFナタン・アケによれば、「僕たちはPKも練習を重ねてきた。監督が順番を決めていたから、誰が何番目に蹴るかは全員が把握していた」という。

 今大会で最後の指揮となるルイス・ファン・ハール監督が、絶大な信頼を寄せて送り出した一番手のファン・ダイクだったが、シュートを決められずに肩を落として選手たちの列へ戻っていった。オランダは続く2番手のMFステフェン・ベルハイスもPKを失敗。最終的にPK戦を3-4で落としている。

 試合後、ファン・ダイクはPKについて、GKマルティネスにコースを読まれていたのではないかと質問されると、「単にセーブされただけだろう。僕はプレミアリーグで(PKを)蹴ったことがない。だから分析するのは難しかったはずだが、彼は止めた。素晴らしいプレーだったが、僕にとって、僕たちにとっては悪いことだった。とても寂しいが人生でこういうことは起こる。それと向き合わないといけない。しばらくの間は悲しむだろうが、家族と過ごしたりして良いことを考えて切り替える」と語った。

 そして、アルゼンチンとの間に力の差を感じたかと問われると「僕たちは、PKで負けたんだ。宝クジのようなものだ。もちろんPKも練習をすることはできるし、僕たちもたくさん練習してきた。だが、不運なことに彼(エミリアーノ)が2つの素晴らしいセーブを見せた」と振り返り、心理面での影響を問われると、「僕たちは全員、自信を持っていたと思う。練習はできるけれど、限界がある。満員のスタジアムで8万人のファンが口笛を自分に向けて吹いてくる状況というのは、練習ではあり得ない。だからPKは宝クジなんだよ。そして、僕たちは負けたんだ」と、説明した。

 そのプレッシャーについて、ファン・ダイクは「ものすごいものがあった。僕は蹴ることを楽しみにしていたくらいだったし、決める自信もあった。準備はできていた。でも、残念ながら、こういうことは起こるんだ。どんなに万全の状態でも決められないことがある」と言い、「チームメイトたちも落胆させてしまったと思うが、この先の数週間で切り替えて、残りのシーズンに向けた飢えに変えていくしかない。今はガッカリしているよ」と、言葉を続けた。

 この試合でも決定的なシュートをブロックするなど、アルゼンチンの攻撃の前に立ちはだかったファン・ダイクだったが、一番手としてPKを決められなかったことを重く受け止めつつも、切り替えてシーズン後半戦の力に変えていくと誓っている。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)