カタールW杯で一気に注目されているGKが、クロアチア代表のドミニク・リバコビッチだ。
グループリーグから安定したセーブを見せてモロッコ代表とベルギー代表をシャットアウト。さらに日本代表とのラウンド16、ブラジル代表との準々決勝ではビッグセーブを連発し、PK戦ではそれぞれ3本と1本をストップする。クロアチア躍進の立役者の1人なっているのだ。
しかしこのリバコビッチ、ここまでの歩みは決して平坦ではなかった。名門ディナモ・ザグレブで育ち、2017年1月は22歳でA代表デビューして「未来の守護神」として注目される。2018年W杯は第3GKとして準優勝を経験し、ダニエル・スバシッチの代表引退を受けてEURO2020の予選からレギュラーとなり、本大会でもゴールマウスを守った。
しかしそのEURO2020、そして続くW杯予選でのパフォーマンスが期待を下回り、2021年11月の大事なW杯予選ラスト2試合でスタメン落ち。もちろん失意に暮れた。その場面でリバコビッチを支えたのが、クロアチア代表の主将であり、同郷(2人ともクロアチア西部のザダル出身)でもあるルカ・モドリッチだ。
FIFAの公式コンテンツ『FIFA +』のドキュメンタリー動画『Captains シーズン1 エピソード6』では、この当時にモドリッチがリバコビッチに次のようにアドバイスした映像が配信されている。
「君のことを気にかけていないとは言わない。でも、代表チームで進化できていない。プレッシャーを感じているのか? 今は不安定な空気を放っている。それがチームに伝わる。なぜミスを許さない? 誰だってミスはする。君の問題はミスを恐れていることだ。ミスをしないやつなんているか? 君は素晴らしいキーパーだ。分かっているだろ?」
大先輩の熱い励ましで再び発奮したリバコビッチは、2022年のネーションズリーグで活躍し、さらに今シーズンのディナモ・ザグレブでもチャンピオンズリーグでチェルシーを零封するなど躍動。カタールW杯では守護神を任され、ハイパフォーマンスを演じている。
記者席から見ていても、リバコビッチとモドリッチの絆は特別なものに見えた。日本戦とブラジル戦を終えた後にはもちろん多くの選手やスタッフから称賛されていたリバコビッチだが、モドリッチとの抱擁は中でも濃厚だった。試合前の整列で先頭がモドリッチ、二番目がリバコビッチという順番も何か示唆的だ。
クロアチア代表は12月13日の準決勝でアルゼンチン代表と対戦。ここでもリバコビッチはビッグセーブを見せられるか。要注目だ。
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
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