サッカー日本代表が決勝トーナメント進出を決めた裏で、ドイツ代表のグループリーグ敗退が決まった。2014年大会を制したドイツ代表はその後、2大会連続でグループリーグ敗退に終わっている。果たして、今のドイツ代表に何が起きていたのか。第3回では元日本代表DF酒井高徳と、シュトゥットガルト在籍時代に酒井を通訳としても支えた河岸貴氏に、スペイン代表戦を振り返ってもらった。※インタビューは第2戦後の11月30日に実施(取材・文:加藤健一)

●ドイツ代表「0トップの弊害」

――スペイン代表戦のドイツ代表について聞きたいと思います。

河岸「クロスが上がっても、中の人間のポジショニングが良くなかったと思うよ。逆に言えば、(大会前の)オマーン代表戦では(ニクラス・)フュルクルクが途中から出てきて、1点取った。リーグの好調を維持していたから、彼がキーパーソンだなと。案の定、スペイン代表戦ではムシアラのところをかっさらって、ズドンと決めた」

酒井「あれもボールを自分が越えた瞬間に走ってるんですよ。その前向きにプレーする動きはそれまでもいい形はあって、ドイツ代表を前向きにプレーさせたら強いなとスペイン代表戦を見ていて思った」

酒井「日本代表戦では0トップの弊害が出ていた(編注:第2回を参照)。カイ・ハフェルツが狙いすぎて、動きすぎていた。やっぱり中盤の選手の動きですよね。(ロベルト・)レヴァンドフスキだったらディフェンスラインの後ろで待っていて、味方が突破したときにディフェンダーの前に入って、クロスを合わせて決めてしまう」

――初戦を終えて、スペイン代表戦ではいい形は増えていたんでしょうか。

酒井「スペイン代表の方が全然強かった。完成度としてかなりの差があった」

●「優勝はないと断言できる」ディフェンスラインが抱える問題

――実際にはスペイン代表に先制を許しました。

河岸「クロスへの対応も含めて、ディフェンスラインに弱さがあると思う。(失点シーンとなった)ズーレのところもそうなんだけど、トニ(アントニオ・リュディガー)はサイドバックがサイドに流れたときに中にいようとする。ずれないからその間がぽっかりと空くんだよね」

酒井「個人的に、やってる仕事自体はそこまで悪くないかなと思うんだけど、チームが良くないときはどうしても1人の行動にフォーカスされてしまう。チームとしての歯車があるんで、チームとしてズレが出ていたんだと思います」

河岸「私たちはトニと(シュツットガルトで)一緒にやってるから、良さもわかるんだよね。身体能力が凄いというのは彼が10代のときから知ってるけど、ポジショニングや視野の確保の部分はまだ改善の余地があるのかなと」

酒井「ズーレの前でモラタにやられた(失点)シーンも、センターバックだからマークは見ているけど、リュディガーが後ろにいるのが分かっているならズーレは絞らなければいけない。センターバックとサイドバックの距離があるから前でやられる。あのレベルであのパス1本でやられた。ベスト16に行けたとしても優勝はないと断言できるくらいのものでした」

●スペイン代表戦は中途半端。ドイツ代表の本来の強さとは?

河岸「浅野がシュートして(マヌエル・)ノイアーが防いだシーンもズーレとリュディガーの間。広い視野が取れなくて、ボールしか見てないのかなと思う。ディフェンスラインの統率というか、幅のコントロールが気になりました」

酒井「全体の連動もできていなかったと思いますね。前から行くときの迫力もないし、それに連動してディフェンスラインを高く上げることもあまりない。スペイン代表の回し方が巧いというのももちろんあるけど、相手をリスペクトし過ぎて、ファーストプレッシャーのスピード感がなかった」

――ガッとプレスに行って剥がされると、リスクになる可能性もありますよね?

酒井「インテンシティがあるときは、剥がされても次で取れるんですよ。ドイツの強いところは、次で取れるところ。そのシーンがスペイン代表戦では少なかった」

酒井「ドイツ代表やバイエルンを見ていても、攻撃と同じように守備に労を惜しまない、それを90分続けられるというのは本当にすごいと思うんだけど、スペイン代表戦ではそれがなかった。間に合わないと思ったら7割で中途半端にいってしまう」

【第1回】サッカー日本代表を舐めていた。「ドイツにいたからわかる」ドイツの敗因
【第2回】ドイツ代表は策を持っていなかった。サッカー日本代表に感じた面倒くささ