「これで1.5軍は半端ないな」
現地時間12月10日のカタール・ワールドカップ準々決勝でイングランド代表を2-1で下したフランス代表を記者席から眺めながら、素直にそう思った。
W杯史上初の冬開催となった今大会は、欧州クラブシーンの2022-2023シーズンを中断して行われており、各国代表チームの登録メンバーは怪我人の影響で必ずしもベストではない。中でもフランス代表は、故障による欠場者が最も多いチームだ。
主力ではDFプレスネル・キンペンベ、MFのエヌゴロ・カンテとポール・ポグバ、FWカリム・ベンゼマが故障で最終リストから外れ、さらにDFリュカ・エルナンデズがW杯初戦で膝十字靭帯断裂の大怪我を負って以降は起用できなくなった。バックアッパークラスでもGKマイク・メニャン、DFリュカ・ディーニュ、MFブバカル・カマラ、FWのクリストファー・ヌクンクとアントニー・マルシアルなどがコンディション不良でW杯に登録できなかった。
これだけの選手を欠きながら、それでもレ・ブルーはカタールW杯で準決勝まで勝ち上がってきた。ダヨ・ウパメカノがキンペンベ、テオ・エルナンデズが実兄リュカ、オーレリアン・チュアメニとアドリアン・ラビオがカンテとポグバ、オリビエ・ジルーがベンゼマの穴をそれぞれ埋め、故障者続出でシステム変更などもあり主力に抜擢されたウスマンヌ・デンベレも攻守で大きな貢献を果たしている。まさに半端ない選手層であり、世界最高のタレント軍団と言っていいだろう。
その一方で、ディディエ・デシャン監督はベンチに少なからず不安を抱えてもいるはずだ。期限的に間に合う状況ながらベンゼマの代役を招集せず、リュカも大会開始後の離脱だったため、MAX26人登録に対して現在のチームは24人。しかも控え要員はDFのウィリアム・サリバ、イブライマ・コナテ、アクセル・ディサシ、MFのマテオ・ゲンドゥジ、ユセフ・フォファナ、エドゥアルド・カマビンガ、FWのランダル・コロ・ミュアニとマルキュス・テュラムと、いずれも潜在能力の高いヤングタレントながら代表キャップは一桁台と経験が極めて浅い選手ばかりだ。
だから今大会のレ・ブルーは基本的にスタメンを固定し、大きくターンオーバーしたのは既にベスト16進出を決めていたグループリーグ3節のチュニジア戦(0-1で敗戦)のみ。5人まで拡大されている交代枠も、ここまでの5試合は4回、4回、4回、4回、1回と一度も使い切っておらず、しかもそのほとんどが疲労軽減と時間稼ぎを考慮した残り15分間でのものだ。
準決勝と決勝に向けては、この選手起用のバリエーションという部分に不安は残る。それでもレギュラー陣のクオリティーは折り紙付きであり、同じくスタメンほぼ固定+交代も最小限で優勝した4年前に続くW杯連覇を成し遂げても何ら不思議はない。まずは大躍進するモロッコ代表と戦う12月14日のセミファイナルに注目したい。
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
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