「左中間を深々と破る――」。プロ野球の記事の大半は、この後に「二塁打」という言葉がつながってくる。開催中の甲子園大会などであれば、外野手の肩の強さと打者走者の足の速さの兼ね合いから三塁打になることもあるが、守備位置も深く強肩揃いのプロ野球であれば右中間はまだしも、左中間を破る三塁打というのは野手が転んだり、スライディングキャッチを試みて捕球できなかったり、という条件がない限り、ほぼ見ない。ところが8月16日(日本時間17日)に行われたエンゼルスとマリナーズの一戦で「2番・DH」で先発出場していた大谷は、第3打席に左中間への大きな当たりを放つと、相手野手陣の様子を見ると、俊足を飛ばして三塁に楽々と到達。一塁到達タイムでもメジャー屈指の速さと言われる走力がまたも注目されたが、瞬時に状況判断をする大谷の野球IQの高さも詰まったプレーだった。
大谷にとって今季4本目となる三塁打だが、過去の3本はいずれもライト方向。強肩外野手が揃うメジャーにあって、センターよりレフト寄りの打球で打者走者が三塁を陥れるというのは、ホームランを打つことより難しいと言ってもいいだろう。時として、外野手がギャンブルのようにダイビングキャッチを試みて後逸、三塁打さらにはランニングホームランになることもあるが、この三塁打は左中間を真っ二つに破りフェンスに到達という当たり。多くの打者走者が、二塁にスライディングをせずに到達する、いわゆる「スタンディングダブル」を選択するような打球だった。
ところが大谷の選択はそうではなかった。打球方向、飛距離、自分の脚力を計算に入れてか一塁から二塁までスピードを落とすことなくダッシュ。この時点で「二塁まで行ければOK」ということが頭にない。常に相手の隙を見つけ、次の塁を狙う姿勢がわかる動きだ。そして二塁ベースに到着する数歩前、ちらっと打球に目をやると再加速した。この時、確かにマリナーズのレフト・ウインカーがわずかに打球処理に手こずる瞬間があったが、エラーとは呼べない些細なもの。むしろまだウインカーがフェンスぎりぎりのところで、かつ大谷に対して背中を向けていたことをチェックしたのだろう。改めて三塁へとスピードをつけた大谷は、ベース手前数メートルのところから豪快にスライディングし悠々セーフ。球場のエンゼルスファンが総立ちになって歓声を送り、中継を見ていた視聴者からも「なんで余裕で三塁にいるんだよ」「途中からスピードアップして楽々セーフ」「二塁からの加速すごかったな」と驚きの声が飛び交った。
そして視聴者の中のコメントには、判断について指摘するものもあった。「このちょこっとの遅れを見てるのか」「ちゃんと外野の対応見てるねえ」。決して全速力での一目散、ではない。時間にして1秒にも満たない、わずか0.1秒か0.2秒かという短さの中で「行く・行かない」をジャッジし、そして三塁にたどり着いた。メジャーには大谷に勝る身体能力を誇る選手は多くいる。ただし「野球IQ」と言われるような、各種の判断まで兼ね備えた選手は決して多くはない。投手と打者、二刀流だけでも絶賛される選手が、走塁でもハイセンスなプレーを続けるのだから、やはりファンは打席を迎える度に「次は何を見せてくれるのか」と大歓声を送る。
(ABEMA『SPORTSチャンネル』)
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