■戦死兵士の遺族の苦悩

【写真・画像】「捨てられた日本人」戦後80年 日本国籍を求めてさまよう“同胞”を追って 7枚目
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イリーナさん夫婦と母ハンナさんの再会

 イリーナさん夫婦が向かったのは、夫アナトリーさんの母親の家。待ちわびた母との涙の再会。だが、家族には悲しい事実があった。ウクライナ軍兵士だった息子のドミトロさんは、2023年7月に前線で戦死。さらに、その3か月後、甥のオレクサンドルさんまでも戦死したのだ。

「悲しみと苦しみに満ちた2年間でした。人生で得たものすべてを失いました。財産も家もなくしました。過酷な環境で健康を損ね、家族までも失いました。いちばんつらかったのは、孫たちが戦死したことです。悲しみのどん底です」(母ハンナさん)

 2人は母ハンナさんの家に身を寄せることなった。1カ月後、イリーナさん夫婦は、別の町で避難生活を送る娘・サーシャさん(33)と孫たちと再会した。娘のサーシャさんは、戦死した甥の妻・オレナさんと一緒に暮らす。

 サーシャさんは、へルソンの自宅にロシア兵が踏み込んで来た時のことを語ってくれた。「彼ら(ロシア兵)が家宅捜索にやって来た際、(ウクライナの国旗色の)黄・青色のブレスレットを見つけたのです。父はひどく殴られました。家中ひっくり返されてめちゃくちゃになりました」

 兄のドミトロさんは生前、もし自分が死んだら灰にして故郷のヘルソンにまいてほしいと話していた。しかし、ロシア軍の支配下にあるため、遺灰は手元に置かれたままだ。

支給されない遺族補償金
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