【写真・画像】「捨てられた日本人」戦後80年 日本国籍を求めてさまよう“同胞”を追って 8枚目
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オレナさん。夫のオレクサンドルさんは前線で戦死

 一方、オレナさん(36)の夫・オレクサンドルさんは、東部の激戦地で戦死。遺体は損傷が激しく、歯形と身につけていた遺品でやっと夫だと分かったという。前線で戦死した兵士の家族には、遺族補償金が給付されることになっている。申請には何枚もの書類が必要だが、夫の所属部隊は発行してくれなかった。結局、「書類不備」となり、申請は受理してもらえなかった。

 軍から彼女のもとに届いたのは、夫の「名誉の戦死」を称える証書だけだった。「まだ何も受け取っていませんし、今後も無理かもしれません。みんな疲れ果てています。軍はさらに疲弊し、士気も下がっています。兵士も市民も政府に失望しています」。

 今、こうした補償金の未払いが相次ぎ、犠牲に報いようとしない政府への不信が生まれている。ロシア軍の占領は受け入れたくない。だが、先行きは見えない。

 イリーナさんは、戦火に翻弄されたこの2年を振り返る。「すべて変わりました。かつての生活を思い出さない日はありません。この2年間、私たちはその日一日をただ生きているだけです」。

 2023年5月、オリヒウの街を案内してくれたオレクシー巡査が、その3か月後に亡くなった。検問所での職務中にロシア軍に爆撃され、同僚の警官とともに命を落とした。2024年2月、オレクシー巡査の死から半年にあたるこの日、家族は墓を訪れた。

「あなたは私の星。私の息子……。戦争のために我が子を産んだのでしょうか。命のため、平和のために産んだのに…」(母ナタリアさん)

 戦没兵士が眠る墓。墓碑の数はいまも増え続けている──。

※情報は2024年8月10日地上波初放送時

 (朝日放送テレビ制作 テレメンタリー『いまだ来ぬ春 ~ウクライナ 疲弊する人々~』より)

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いまだ来ぬ春 ~ウクライナ 疲弊する人々~
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