■ブラックボックスを透明化、入管行政の課題
ウィシュマさん死亡事件で入管の責任を問うデモ活動
2024年3月、ウィシュマさんが死亡して3年が経ったころ、ウィシュマさんの遺族代理人弁護士を中心に街頭デモが行われていた。入管の責任を問う声は止まない。
同時期、入管医療に関する勉強会が開かれていた。全国に4人しかいない常勤医師のうち3人が集まった。そこで間渕医師は、恩師から掛けられた言葉を紹介した。「入管の中にいざるを得なくなった方々に十分な医療を展開して、かつ彼らの人権を守ることは、結局回り回れば日本の国を守ることになる。世界に向けて、恥ずかしくない日本の入管医療を展開することが、結局日本が世界の国の中で確固たる地位を得ることになるから頑張れと言われた。これは非常に心に沁みた」。
収容と一体の入管医療には、ほかの医療現場にはない難しさがある。被収容者が意図的に食事をとらない「拒食」もその一つだ。拒食している男性は「仮放免」を求め、収容が解かれるまで食事をとらないと宣言。
処方された歯の飲み薬も飲まず、「自分は拒食しているから水を飲まない。だから薬も飲まない」と言う。処方した足の塗り薬を使っているか確認したところ、男性は「もらっていない」と不満を口にし始めた。「なぜ、くれないのか」と訴える男性。
間渕医師は男性の話を聞いて、「もしそうならインシデント(事故につながりかねない状態)だからちゃんと調べてもらいたい」と入管職員に注意を促す。そして、塗り薬について調べたところ使えるように準備はしていたが、男性から「使いたい」という申し出がなかったと入管は説明している。
そんな中、男性の仮放免を認めるかの検討会が開かれた。その後の取材で男性は2024年6月から始まった監理措置制度で収容を解かれたことが分かった。
取材班が被収容者数人と面会し、医療について聞いたところ「不満はない」と答えた人がいた一方で「診察を希望しても、1週間程度かかる」「内視鏡の検査をしてくれない」といった声もあった。
今後の入管行政の課題
