■「要塞化」に揺れた町長選、3人の候補者
2025年8月初旬、町長選に先立って立候補予定者が一堂に会し、議会で激論を交わしていた二人が隣り合った。
一人は、「政治家の最大の使命は戦争をさせないこと」と訴える田里千代基氏。防衛力強化を進める政府や同調する町長に厳しい目を向ける一方、ある計画の実現を目指してきた。
与那国・自立へのビジョン。2005年に市町村合併を拒み、単独で生きるすべとして町民が議論して記した。隣り合う台湾を足掛かりに、アジア地域とつながる未来を描いた。
「台湾との交流・交通なくして島の自立発展はない。完全に島が崩壊するような状況。要塞化という言葉が思いつく。何とか止めないといけない」(田里氏)
対するのは、現職だった糸数健一氏だ。2024年の憲法記念日、改憲派の集会で「全国民がいつでも、日本国の平和を脅かす国家に対しては、一戦を交える覚悟が今、問われているのではないでしょうか」と説き、物議をかもした。
「躊躇なく、必要に応じて自衛隊の増強なり、増員なり、しっかりやっていただきたい」(糸数氏)
政府が示すミサイル部隊の配備にも理解を示してきた。2016年に駐屯地が置かれる前、地元で誘致活動も行った。防衛省に配備を要請したある局面を語る。
「鮮明に覚えているのが、関口氏(当時・陸上幕僚副長)が開口一番こうおっしゃった。『この瞬間を待っていました』と。タイミング的に我々の思いと、陸幕の中で計画していたのがマッチングしたのかなと。
(Q.一時期は2027年に台湾有事と)もう2年後、そういうこともある。対応できるのは僕しかいない」(糸数氏)
そしてもう一人、前町議の上地常夫氏も立候補を表明。医師の常駐が危ぶまれる島の診療所を、沖縄県の施設に移行する案などを訴えた。
「自衛隊誘致に賛成した皆さんの意見として、どこまで強化するの?防衛力を強化するの?この島は。という声も上がっている」(上地氏)
自衛隊に理解を示す上地氏だが、増強には慎重姿勢だ。
自衛隊配備の経緯と「台湾有事」のシミュレーション
