「台湾有事の最前線」で揺れる与那国島…自衛隊増強か生活基盤の安定か 国境の島が直面する“国家の重荷”と住民のリアル

テレメンタリー
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■自衛隊配備の経緯と「台湾有事」のシミュレーション

開設当時の与那国駐屯地 2016年3月
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 2016年の与那国駐屯地設置から始まった沖縄県・先島地域の自衛隊配備。防衛の「空白」とされた島々には台湾有事も念頭に、部隊強化の計画が相次いで浮上する。

 その経緯に深く関わった人物がいる。前参議院議員の佐藤正久氏だ。元陸上自衛官で、イラク派遣では先遣隊隊長も務めた。与那国への自衛隊配備の10年ほど前、佐藤氏は2007年の参院選初当選と前後し、沖縄の先島地域を訪れていたという。  

「石垣島の方々からは、八重山に自衛隊をぜひ誘致したいと。国境の離島、与那国は象徴的な存在だと思い、ここを足掛かりに沖縄の防衛を強化できたら、国民への説明という意味でもいいのではと。そこから取り掛かった」(佐藤氏)

 与那国では、当時の外間前町長らと意見交換を重ねたという。「外間町長に防衛省に行ってくださいと。恩返しとして浜田防衛大臣(当時)に行ってもらい、検討の流れがぐっと進んだというふうには認識している」。

 自衛隊施設が置かれた先島は、安全保障の議論ではどう位置づけられるのか。

 アメリカの有力シンクタンク、戦略国際問題研究所のマーク・カンシアン氏。2023年に記した台湾有事のシミュレーション報告書が注目を集めた。

「(地図を指して)与那国、ここまで日本の領土だ。これらの島の地上に地対艦ミサイルや防空ミサイルがあれば、中国軍(の軍事行動)にとって大きな制約になるだろう」(カンシアン氏)

 台湾有事では、自衛隊とアメリカ軍は南西諸島の島々に散らばって、中国軍を攻撃する筋書きだ。日本のアメリカ軍基地も出撃拠点とされる中、中国側はどう出るのか。カンシアン氏は「中国軍は何百発のミサイルを米軍基地と自衛隊基地に撃ち込むだろう」と予測する。

 代替策として「島の安全な場所に避難すること」「軍隊からは離れること」などと説明するカンシアン氏のシミュレーションに対し、こうしたワシントンで進む「安全保障」の議論に対し、ジャーナリストの布施祐仁氏は「島の状況が全くイメージがついていない」と疑問を呈す。

 沖縄での自衛隊やアメリカ軍の訓練の取材を続けてきた布施氏。自衛隊とアメリカ軍は現実の訓練でも離島に分散して戦うシナリオをなぞる。

「リスクが高く、最悪あっという間に全滅して終わってしまう。特攻作戦的なところがある。(離島での分散展開は)あくまで(台湾有事の想定で)中心的な作戦には位置づけられない」

「ワシントンで行われている、島の住民を無視した、現実から乖離した議論の方に、日本の防衛戦略や南西地域で進められる軍備の強化もどんどん進んでいってしまっている」(布施氏)

国境の島が下した決断と日米共同訓練
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