6月シリーズ初戦のパラグアイ戦、日本は4-1と快勝したけど、手応えのない相手だった。どの部分を切り取っても日本が上回っていたし、基本的にずっとゲームを支配していた。

 守備への切り替えの速さも、個人で打開できる能力の高さも、選手の距離感やパスをつなぐ能力も、日本のほうが圧倒的にレベルが高かった。

 この試合で注目して見ていたのは、GKのシュミット・ダニエル。1失点こそしたけど、ファインセーブも2本ほどあったし、存在感があった。そして、今回招集されたGKの中でも、足もとの技術が一番高いと改めて感じた。前線から相手が激しくプレスに来ている難しい状況でのセンターバックからのバックパスでも、まったく慌てることなくコントロールして冷静に処理できていた。

 GKも絡んで自陣からビルドアップしていくという世界で主流のサッカーを日本もやっていくのであれば、シュミットをレギュラーとして起用していく選択肢も考えるべきだ。
 
 そのほか守備陣では、左サイドバックで先発してA代表デビューを果たした伊藤も見事な働きをしていた。攻撃時にはCKで何度もゴール前へ飛び込んで、ヘディングで競り勝つなど、空中戦の強さも光った。

 さらに、左足のフィードの能力もとても高い。浅野の先制点も伊藤の自陣からのロングフィードから生まれたものだし、そのほかにもロングボールで再三チャンスを作っていた。あれだけ正確なパスを出せるなら、裏への抜け出しが得意な前田や浅野、古橋も活きるし、日本の攻撃のバリエーションが増える。今後に向けて伊藤には可能性を感じるし、しっかりスカウティングをして彼を招集したスタッフも評価したい。

 伊藤も新しい発見だったけど、今回、代表復帰で純然たるプライドを感じさせた鎌田と堂安の好パフォーマンスもこの試合の収穫。お互いに良いプレーを引き出し合っていたし、良いコンビネーションだった。ワールドカップ最終予選の途中からメンバーを外された悔しさをバネに、自分たちの真価を今日のゲームでしっかり証明した。
 
 とくに堂安は個人的に好きな選手で、特別な思いがあっただけに、これまで厳しい目で見てきた。以前は、右サイドでボールを受けたときに横パスやバックパスに逃げることが多かった。ただ今回はパーフェクトなプレーぶりだった。

 一番良かったのは、ボールを持ったときに積極的に仕掛けて縦に行く動きや、相手を背負いながらのフィジカルを活かしたターン。右サイドで起点となっていたし、左の三笘への質の高いサイドチェンジも素晴らしかった。PKは外したけど、簡単なプレーに逃げずに積極的に仕掛ける姿勢は評価に値する。
 
 一方、気になったのは、伊藤の攻撃時の左サイドでの動き。前の三笘にボールが入ったとき、何度かインナーラップして攻撃参加したシーンがあった。でも伊藤はもう少し上がるのを控えても良かったんじゃないかな。三笘はひとりでサイドを打開できる個人技を持っているんだから、後ろをサポートするだけで、それ以上危険を冒す必要はなかったはず。

 こうした課題ももちろんあったけど、全体的に見れば、みんなのやる気や攻守の切り替えの速さ、守備における数的優位の作り方など、収穫の多いゲームだった。

 次戦はついにブラジルとの対戦。チケットが完売した満員の国立競技場で、FIFAランク1位の破壊力のある王国ブラジルに対し、日本がどんな戦いを見せるのか、いまからとても楽しみだ。

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