11月21日に開幕する2022FIFAワールドカップ・カタール(カタールW杯)まで残り約5か月に迫る中、サッカー日本代表は貴重な国際親善試合の機会となった「6月シリーズ」の4試合を終えた。
日本代表の4試合の結果は2勝2敗。FIFAランキング60位のガーナ(6月10日)、同50位のパラグアイ(6月2日)にはそれぞれ4-1と快勝した一方で、同1位のブラジルには0-1で敗れ(6月6日)、最終戦(6月14日)には同35位のチュニジアに0-3と完敗を喫した。チュニジア戦の完敗で批判は一気に高まるも、森保一監督がさまざまな選手を起用したことによってチーム内競争が激化したことは収穫だといえる。
ここではそんな「6月シリーズ」を終えた時点での、日本代表カタールW杯本大会の予想スタメンを作成し紹介したい。森保ジャパンの、ポジションごとの序列についても触れていく。
予想システム:4-1-2-3
試合途中で変わることはあっても「6月シリーズ」の4戦ともに日本代表は同じシステムでスタートした。これを見るに、カタールW杯本大会でも「4-1-2-3」が基本形となる可能性は非常に高いだろう。オプションは「4-2-3-1」か。
GK:権田修一(清水エスパルス/日本)
「6月シリーズ」パラグアイ戦とチュニジア戦ではシュミット・ダニエル、ガーナ戦では川島永嗣が出場したが、最終予選で主力を務めブラジル戦にも出場した権田修一こそが、森保監督の考える1stGKと言えよう。セーブの巧さに疑いの余地はなく、耐える展開が多くなりそうなW杯同グループの強国ドイツ、スペインとの戦いにはもってこいの存在。ダニエル、川島は、6月に出場した試合では権田との距離を詰められなかった印象だ。
DF:長友佑都(FC東京/日本)
右サイドバック(SB)は、ブラジル戦でヴィニシウスを止め、評価を上げた長友佑都が有利か。ただし、1対1の強さを除くとピークを過ぎた感は否めず、他の選手にも付け入る隙はある。負傷で「6月シリーズ」は招集外となった酒井宏樹、出場機会を増やしつつある山根視来と三つ巴の可能性も。もしくは、冨安健洋をこの位置で起用するプランもある。
DF:吉田麻也(サンプドリア/イタリア)
センターバック(CB)の1人は、日本代表キャプテンである吉田麻也が出場するに違いない、かと思われた。ところがチュニジア戦で複数失点に絡み、なかでも先制点のPKにつながったファウルは完全に不用意なものだった。一気に足場が揺らいだが、それでも森保監督の信頼は厚いのではないか。W杯本大会に向けて所属チームで出場機会を増やし、コンディションの向上を期待したい。
DF:冨安健洋(アーセナル/イングランド)
負傷さえなければCBの一角は冨安健洋で決定だろう。プレミアリーグ、アーセナルでSBとして主力を務めた実力は伊達でなく、異なるポジションであってもすぐにフィットするなど適応能力も高い。日本代表の右SBの層の薄さ、板倉滉(シャルケ04/ドイツ)の台頭によって、冨安が右SBで起用されることも不思議ではない。その場合は成長著しい板倉が、この位置に入るか。
DF:伊藤洋輝(VfBシュツットガルト/ドイツ)
左SBは、一気に台頭した伊藤洋輝と、酒井らが右SBに入った場合の長友との一騎打ちか。伊藤はCBが本職のためサイドハーフ(SH)の援護は難しいが、左足から放たれるクロスの精度は非常に高い。層が薄いポジションのためより多くの選手を試したかったが、新戦力を発掘する時間は残されていない。
MF:遠藤航(VfBシュツットガルト/ドイツ)
アンカーのポジションには、遠藤航が君臨する。ドイツ1部で2年連続デュエルの成功数首位に輝いた「デュエルキング」であり、日本代表でもピンチの芽を摘む役割を担っている。ビルドアップにやや課題はあるが、それを差し引いても絶対的な選手だろう。むしろ、替えがきかないことこそが問題。その面はユーティリティな板倉に期待したい。
MF:守田英正(CDサンタクララ/ポルトガル)
中盤の一角は、守田英正のものだろう。「6月シリーズ」では左ふくらはぎの負傷によって途中離脱したが、不在のチュニジア戦では完敗の結果に、はからずも重要性が再認識されることとなった。ライバルは原口元気(ウニオン・ベルリン/ドイツ)や鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト/ドイツ)だが、遠藤との補完関係には「一日の長」がある。中盤のバランスを取るためにも欠かせない。
MF:田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
中盤のもう1人は、田中碧か。6月のパラグアイ戦ではライバルの原口が素晴らしいパフォーマンスをみせたが、チュニジア戦では中盤のスペースを埋められず。ブラジル戦に先発出場した田中と原口の差は、遠藤ら中盤の3人で「お互いに」バランスを取り合えるかどうかだろう。より攻撃的にシフトする場合は、原口や鎌田という選択肢が浮上する。
FW:伊東純也(KRCヘンク/ベルギー)
右ウイング(WG)は伊東純也のものだ。競争が熾烈なFW争いのなかで、明確にポールポジションに立つ。苦しい時に得点を決めてくれるスピードスターであり、攻撃だけでなく守備面でも森保ジャパンの「外せない選手」の1人。堂安律(PSV/オランダ)や久保建英(マジョルカ/スペイン)も候補だが、前者は中盤での起用も考えられ、後者はガーナ戦で代表初ゴールを決めたものの伊東の牙城を崩すような活躍はみせられていない。
FW:浅野拓磨(VfLボーフム/ドイツ)
センターフォワード(CF)に入る可能性が最も高いのは、浅野拓磨か。古橋亨梧(セルティック/スコットランド)と僅差の戦いだが、特徴を出せているのは浅野だろう。また前田大然(セルティック/スコットランド)もチャンスに絡んではいるが、結果は出せていない。3選手とも似たタイプのため、森保監督に起用され続けた大迫勇也(ヴィッセル神戸/日本)が再び選出される可能性もある。期待された上田綺世(鹿島アントラーズ/日本)は、途中離脱でチャンスを活かせず。
FW:三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ/ベルギー)
左WGの三笘薫は、伊東とともに攻撃の要。途中出場が多いものの常にチャンスを構築できており、出場時間を増やしてきた。この位置ではおもに南野拓実(リバプール/イングランド)がスタメン出場しているが、最適なポジションだとは思えず本来の実力を発揮できていない。組織としてあまり良い攻撃を構築できていないからこそ、伊東と三笘の両WGの突破力が必要不可欠となる。
ここで予想スタメンに挙げた11人は、多くがカタールW杯アジア予選を戦い抜いた面々だ。「6月シリーズ」を除いてある程度選手を固定してきた森保監督が、ここから大きくメンバーを変えるとは思えず、本大会でもこの選手たちを中心に挑むのではないだろうか。