11月のカタール・ワールドカップ(W杯)に向け、重要な強化の場である4連戦の6月シリーズの“前半2戦”が終了。2日のパラグアイ戦は4-1で勝利し、6日のブラジル戦は0-1で敗れた。

 今後は、10日にガーナ戦、14日にチリまたチュニジアとの一戦が控える。ブラジル戦では現時点のベストに近い陣容で挑み、世界の高い壁にぶつかったが、それを超えるためにも、より多彩な組み合わせを構築する必要がある。

 そこで注目されるのが、東京五輪世代のさらなる台頭だ。

 ここまでの状況を見ると、パラグアイ戦では三笘薫(ユニオンSG)と田中碧(デュッセルドルフ)の2人がゴールを挙げ、ブラジル戦では板倉滉(シャルケ)がMVP級の働きを見せた。彼らに左SBで存在感を高めている中山雄太(ズウォーレ)を加えた4人は、昨夏の五輪本番にフル稼働した後、W杯最終予選で出場機会を増やしていった面々だ。

 とりわけ、田中は日本のW杯7大会連続出場に黄信号が灯った直後、昨年10月のオーストラリア戦で4-3-3のインサイドハーフに抜擢され、値千金の先制弾を挙げた。守田英正(サンタ・クララ)との左右のコンビも絶妙で、遠藤航(シュツットガルト)を加えた3人の中盤がV字回復の原動力になったと言っても過言ではない。今回のブラジル戦でもスタメンでピッチに立っており、現時点では森保ジャパンの主力の一員と見ていいだろう。

 中山も最終予選で8試合に出場。長友佑都(FC東京)の後継者筆頭の地位を築きつつある。板倉も1・2月の中国・サウジアラビア2連戦と、カタール行きの切符を獲得した3月のオーストラリア戦では、CBで3試合連続先発。不在だった吉田麻也(サンプドリア)と冨安健洋(アーセナル)の穴をしっかりと埋めた。

 さらに三笘もオーストラリアとの大一番で2得点という強烈なインパクトを残し、重要戦力としての地位を勝ち得た状態である。
 
 とはいえ、現時点で「絶対的主力」と言い切れるのは、別メニューの続く冨安1人ではないか。というのも、田中は原口元気(ウニオン・ベルリン)や鎌田大地(フランクフルト)という豊富な国際経験を誇る年長者に追い上げられているし、中山もまだまだ長友の控えから脱し切れていない。

 板倉の場合も吉田と冨安が揃った際にはベンチに追いやられる可能性が強く、三笘もジョーカーとしては有効だが、先発組に入っているわけではない。そう考えると、東京世代の突き上げが十分と言い切れない部分もあるのだ。

 翻って20年前の2002年日韓W杯のメンバーに目を向けると、初戦のベルギー戦のスタメン11人のうち、9人が2000年シドニー五輪世代だった。残る楢崎正剛と森岡隆三もオーバーエージ(OA)枠で五輪に出ていて、年齢的にほとんど変わらなかった。フィリップ・トルシエが五輪代表チームとの兼任監督を務めていたメリットを最大限に生かし、非常にフレッシュな陣容で史上初のベスト16入りを果たしたのだ。

 同大会で2ゴールを奪った稲本潤一(南葛SC)は当時22歳。今の久保建英(マジョルカ)と1歳しか違わない。それで大黒柱を担ったのだから、同じ兼任体制の東京五輪メンバーはもっともっと主軸に入り込む必要がある。
 
 6月4日に21歳の誕生日を迎えた久保が「基本的に僕、『ここはこうしなきゃいけない』という締め切りみたいなものをある程度決めて、予想の範疇でやってきたけど、去年の怪我もあって今は『ちょっと計算が合わないな』と思ってしまっている」と本音を吐露した。森保ジャパン発足時に、南野拓実(リバプール)、中島翔哉(ポルティモネンセ)とともに「三銃士」の一翼を担った堂安律(PSV)も同じような悔しさを抱えているだろう。

 今年1月に移籍したセルティックでゴールを量産した前田大然、今季J1得点ランクトップの10ゴールをマークしながら、まだ出番をもらえていない上田綺世(鹿島)も現実の厳しさを痛感しているかもしれない。

 だからこそ、彼らはガーナ戦からの2連戦でガムシャラにチャンスを追い求め、それをモノにする貪欲さを示すことが肝要だ。最終予選4ゴールの伊東純也(ヘンク)が顕著な例だが、代表で目に見える数字を残せば、必ずと言っていいほど出番は増える。特にアタッカー陣はそのことをよく分かっているだろう。

 8日の練習を見る限りだと、ガーナ戦は前田と久保が左右のFWで先発する可能性が高まった。最終ラインもパラグアイ戦でインパクトを残した伊藤洋輝(シュツットガルト)が左SBで起用されそうだ。CBの1枚には板倉か中山も入る見込みで、吉田や遠藤がベンチに回るなか、若い面々がリーダーシップを取って試合を運ぶ形が有力視される。

 そういう時こそ、彼らは大胆さと積極性を前面に押し出すべき。パラグアイ戦で決定機を外した前田は「焦りと言うか、どうなんですかね……」と枠を外した理由に思いを馳せていたが、どこかで「決めないと生き残れない」という重圧を背負ってしまっていたのかもしれない。そういう気持ちをいったん横に置き、本来の自分を出すことに徹すれば、効果的なパフォーマンスにつながるはずだ。
 

 いずれにせよ、W杯までラスト5か月間の東京五輪世代の成長が本大会を左右するのは間違いない。若手が既存の序列をガラリと変えるくらいの凄まじい勢いを押し出してくれれば、ドイツやスペインに勝てる確率はグッと上がる。

 そう前向きに考えて、久保らにはガーナ戦からの2試合でかつてない闘争心と躍動感を見せつけ、見る者を驚かせてほしい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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