【日本 0-3 チュニジア キリンカップサッカー2022】

 キリンカップサッカー2022の決勝が14日に行われ、サッカー日本代表はチュニジア代表に0-3と大敗した。

 1トップで先発したのはFW浅野拓磨だった。そして、浅野との交代で60分から登場したのがFW古橋亨梧だ。これまでエースとして君臨してきたFW大迫勇也が不在な中、得点源として期待された27歳のストライカーだったが、約30分間のプレーでノーゴールに終わった。

 6月シリーズの4連戦で古橋亨梧が先発起用されたのは、6日のブラジル代表戦のみ。10日のガーナ代表戦は出番がなく、プレーした3試合で合計105分間しかピッチに立てず、1つもゴールを奪えなかった。ボールに絡んだ回数もごく限られるほど、存在感を発揮できていない。

 古橋は自らの特徴として「自分のタイミングがある」ことを挙げる。少しずつチームメイトが「それを見てくれている感覚はある」というが、決定機に結びつく場面はなかなか訪れず苦しんでいる。

 セルティックで公式戦20得点を記録するなど抜群の得点力を誇るが、日本代表では2021年6月のタジキスタン代表戦以来ゴールを決められていない。カタールワールドカップアジア2次予選で3得点を挙げたが、アジア最終予選は無得点だった。

 古橋に足りていないのは、やはり「時間」だろう。セルティックでは毎日の練習でチームメイトと連係を深める時間があり、「自分のタイミング」を理解してもらうためのコミュニケーションを取る時間もたっぷりある。

 一方、日本代表が集まれるのは数ヶ月に一度で、合宿中は中3日や中4日で試合をこなしていくため、その間に練習できる時間は非常に限られている。チーム全体で紅白戦などを行い、11対11のゲームの中で感覚をすり合わせる機会はほとんどない。

 ディフェンスラインの背後に抜け出す駆け引きや、一瞬の動き出しに長ける古橋の場合、パスの出し手となるチームメイトには「タイミング」を理解し、合わせてもらう必要がある。

 十分に時間が取れ、多くの試合をこなせていたセルティックでは、MFトム・ロギッチやFWジョタ、FW前田大然といったアシスト役たちが古橋の動き出しの感覚を完璧に理解していた。それだけでなくチームメイトたちはまず最前線の背番号8を見て、いかにゴールを取らせるかに注力していた。

 まだ日本代表では古橋らしい形をほとんど出せていない。「(伊東)純也選手はサイドで1対1で仕掛ける時のタイミング、抜き切らずに(クロスを)上げるタイミングがある。田中(碧)選手はシュートを打つと見せかけてパスを出してくれる」とチームメイトの特徴はつかめてきているが、お互いのタイミングは必ずしも合っていない。

 もう1つ、古橋亨梧にとって痛恨だったのは今年上半期の長期離脱だろう。昨年12月中旬から今年4月上旬にかけて負傷に苦しめられ、今年1月と3月の日本代表活動に参加できなかった。「時間」が足りていない要因は、ここにもある。

 日本代表では大迫を使った攻撃の形が確立されている。彼だけに頼れなくなってきている今、カタールワールドカップに向けて別のオプションも必要になってくるが、まだそれは見えてきていない状況だ。古橋の得点力の高さに疑いの余地はないが、文句なしでエースに据えられるだけの信頼を勝ち取れてはいない。

 カタールワールドカップまでに日本代表が活動できる期間は9月の約2週間しか残されていないが、果たしてそこで古橋を活用した攻撃パターンを確立できるだろうか。ベスト8進出を果たすためには、少しでも多くの「時間」を使い、彼の能力を最大限に引き出す形を見出すことが必要だ。

(取材・文:舩木渉)