「監督には2通りしかない。クビになった監督とこれからクビになる監督」。これは、元イングランド代表監督のハワード・ウィルキンソン氏の言葉である。この2択に当てはめれば、サッカー日本代表の森保一監督は「これからクビになる監督」であろう。
6月の国際親善試合の4連戦、日本はパラグアイ、ブラジル、ガーナ、チュニジアと対戦し2勝2敗。特には最終チュニジア戦(0-3)で、守備の圧倒的崩壊が見られた。その際、森保監督が「チャレンジしよう」とした姿勢を感じた日本のサッカーファンはいただろうか?試合の途中に大きなゲームプランの修正をしたシーンを思い出せる人はいるだろうか?
筆者は試合現場におらず直接の空気感を感じることはできなかったが、そのような姿勢を感じるシーンをテレビ画面から感じることはできなかった。いつも通りの顔ぶれのメンバー、明確にわからないゲームプラン。果たして、今の日本代表は何を目指しているのか?世界でどのポジションを狙っているのか?
否定するつもりでないことをあらかじめ伝えておきたい。あくまでも、ワクワクする日本代表の試合を見たい「1人のファン」として、アルベルト・ザッケローニ監督時代(2010-2014)のある試合から今の日本代表に必要なことを考察する。
ザッケローニ監督時代のある試合
日本代表のワクワクする試合を見たのはいつだろうか?その回想から始めるとしよう。筆者がサッカーを本格的に見だした(戦術的な理解をしだした)のは2010年ごろ。それまでは楽しく顔にペイントして、スタジアムに足を運んでいた戦術もわからない子どもであった。2010年以降で一番ワクワクした試合はどの試合か?
それは2013年11月16日、アウェイで開催された国際親善試合の日本対オランダである。強豪オランダ相手に、しかもアウェイの地で2-2の打ち合いをした試合であった。あの流れるようなパスワークでのゴールを覚えている人も多いはずである。スタンディングメンバーは以下の通りである。
明確だったゲームプラン
この試合の特徴は、やりたいゲームプランが明確であった。攻撃はまずサイドからスタートし、中の空間を空ける。空いたところに本田圭佑と山口蛍が入り込む。
サイドからの攻撃に対しては、大迫勇也と岡崎慎司が必ず中に入る。クロスに対する人数は2人以上いた。この攻撃を90分間し続けた。もちろん2失点については、大きな課題を残したが、守備のスタート地点も明確で良い守備であった。
輝きを放っていた選手たち
後半からメンバーを変えたが、プラン変更は無し。交代の選手たちが良いエッセンスを発揮した。特に香川真司に関しては、想定を越える輝きを放っていた。
今の日本代表の話題の1つであるワントップは、大迫勇也と柿谷曜一朗が務めた。タイプの違うFWだが、大迫は相手を背負ったときの強さを発揮した。柿谷は前を向いたときの推進力とフリーランの能力を発揮した。非常に頼りになるワントップであった。
ディフェンス陣も最後に足を出す強さを発揮した。2失点目はアリエン・ロッベンの個人技にやられたが、間違いなくゴラッソであった。仕方ない。ディフェンスラインも高く、とてもアウェイでやるような戦い方ではなかった。ディフェンスラインが下がらないからこそ、全体が相手陣地に近づき、サイド攻撃時に人数をかけることができていた。
このような明確なゲームコントロールができていたのは、当時のザッケローニ監督の手腕である。ロッカールームでの会話はわからないが、ゲームプランを明確化できる点において、今の森保監督との大きな違いである。
特にハーフタイムのメンバー交代で、コート中央でボールを落ちつかせ且つ配球できる遠藤保仁を投入したのは、前半の攻撃プランを継続していこうとする意図であることが明確である。森保監督であったら、おそらく遠藤を投入するようなことはしていないだろう(最も明確なゲームプランが見えないため、誰を入れてもよくわからないというのが本音である)。
今の日本代表に必要なことは?
では今の日本代表がワクワクするゲームをするためには何が必要なのか?それは「監督を変えること」であると言いたい。過去にはワールドカップ(W杯)直前で監督を交代し、ベスト16入りを果たした代表チームも存在した。今からでも遅いことはないだろう。
もちろん、選手選考も大きなポイントであるのは間違いない。しかし、ゲームを考え最終的にゲームの結果の責任を持つのは監督である。サッカーを表現する場は「試合」であり、その試合に向けて様々な人が関わる。そのスタートは監督選びからである。
2022年11月21日から12月18日にかけて開催されるカタールW杯。7回目の出場を決めている日本代表。W杯が始まる前だからこそ、こういう議論をすべきだと私は考える。W杯が始まってしまえばその時の試合しか見えなくなり、終われば過去の結果でしかなくなるからだ。
もう一度、言いたい。私は日本代表が好きである。だから、ワクワクする日本代表の試合が見たい。