7月19日から開幕するE-1選手権。日本代表は初戦の香港戦から戦いをスタートさせることになる。

「僕も過去に2回(2015・17年)出ていますが、難しい大会だなと。急造チームで合わせる時間もないですし」とキャプテンに指名された谷口彰悟(川崎)も神妙な面持ちで話す通り、今回は26人中11人が代表初招集。全員が一堂に会するのも18日からという状況だ。

「初めて話す人、サッカーをする人もたくさんいる」と、森保ジャパン常連組の彼が言うのだから、大半の面々はよく知らない仲間と優勝を目ざして東アジアのライバル国と戦っていかなければいけない。指揮官のチーム作りも困難を極めそうだ。

「3試合で、できるだけ多くの選手を起用しながら、大会に臨もうと思っています」と森保一監督は前日公式会見でコメントしたが、香港戦に関しては、17日の合宿初日からフルメニューをこなした川崎・名古屋勢を軸に編成することになりそうだ。谷口、山根視来、脇坂泰斗、中谷進之介、相馬勇紀の5人は16日のJ1公式戦がなかったぶん、疲労がなく、コンディションが良い。そういう面々を優先的にスタメン起用すると見られる。

 それ以外は17日に試合があった広島勢以外から抜擢される公算が大。となれば、GKは谷晃生(湘南)か鈴木彩艶(浦和)、左SBは杉岡大暉(湘南)か小池龍太(横浜)、中盤は岩田智輝と藤田譲瑠チマの横浜勢が脇坂と絡む可能性が高い。3トップは水沼宏太、西村拓真の横浜勢が揃って入ることになりそうだ。
 
 短期決戦のE-1では、所属クラブのコンビや連係をダイレクトに生かすほうが得策。バイエルン・ミュンヘンを軸に据えているドイツ、バルセロナをベースにしているスペインのチーム編成を徹底分析している森保監督も、今回は計算できるユニットを有効活用するのが賢明だと考えているはずだ。おそらく24日の次戦・中国戦は広島勢を中心に編成する見通し。1週間以上の練習期間を取れる27日の韓国との決戦はベストメンバーで行くのではないか。

 そういったアプローチで2013年の韓国大会以来、2度目のE-1タイトルを手にできれば、選手にとっても理想的だ。「勝っている試合に出ているのが一番のアピールになる」と代表OB松井大輔(YS横浜)も強調したように、今大会からカタール・ワールドカップ行きを現実にしたいと考える面々にしてみれば、何よりも結果も重要。そこは絶対に外せないポイントと言っていい。

 思い起こせば、9年前のE-1でも、MVPに輝いた山口蛍(神戸)、得点王の柿谷曜一朗(名古屋)ら6人が代表に定着し、2014年のブラジルW杯を射止めている。もちろん、E-1からW杯まで1年あった当時と、4か月しかない今回とでは、新戦力の滑り込みの余地には大きな差があるのも事実だ。しかも、今は代表の大半が欧州組。国内組には逆風が吹いている。
 
 とはいえ、26人には東京・パリ両五輪世代の若手が何人もいる。この1年間でA代表の主力級まで駆け上がった三笘薫(ブライトン)のような凄まじい成長曲線をここから描く人間が出ないとも限らないのだ。

「(田中)碧(デュッセルドルフ)や薫が日本を勝たせている姿を見て、刺激を受けています。逆に自分がそこに選ばれるだけの活躍をしていたかというと、まだまだ足りなかった。やっぱり数字を残すことが大事なんだと再認識させられています」と、同世代の相馬もしみじみコメントしていた。

 岩田や森島司(広島)ら同世代のメンバーも「このチャンスを逃したくない」と並々ならぬ意欲を示すはずだ。当落線上にいる大迫敬介(広島)、谷の両守護神も今大会が成否の分かれ目になると言っても過言ではない。彼らが目の色を変えてピッチに立つ姿を指揮官も待ち望んでいるだろう。

 一方、年齢層の高いメンバーにとっても、今大会はW杯を賭けた最後のチャンス。最年長・32歳の水沼はもちろんのこと、29歳にして10年ぶりに代表復帰した宮市亮(横浜)、最終ラインの一角で断続的に呼ばれている佐々木翔(広島)らも今、ここでアピールするしかない状況である。
 
「自分はまだペーペーなんで、本当にA代表に絡んでいけるように、まずはここでしっかりとプレーしたい」と宮市はゼロからのスタートを誓っていた。アーセナルやフェイエノールトでプレー経験のある彼がトップフォームを示し続けられるのなら、本大会メンバー候補に十分入ってくるはず。欧州経験のある西村、小池、橋本拳人(神戸)らも同様ではないか。

 意気揚々と国際舞台に挑む国内組の誰が世界と伍して戦える選手なのか。カタールで戦力になるのか。それを見極めながら、優勝という結果を求めるのが、今回の森保監督の最重要テーマになってくる。2つの命題はシンプルではあるが、両立させるのは難しい。まかり間違えば、2017年の日本大会で韓国に4失点し完敗を喫したヴァイッド・ハリルホジッチ前監督(現モロッコ代表監督)のような解任論に巻き込まれないとも限らない。それだけ慎重な対応が求められてくるのだ。

 ただ、W杯前に積極果敢にチャレンジできる場は今回しかないというのも、1つの事実だ。ここで守りに入っていたら、日本代表は既存戦力しか使えない集団になり、本番での希望も広がらない。そうならないように、指揮官には大胆かつ積極的なトライに打って出てほしい。現在の基本布陣である4-3-3のみならず、3バックのテストなどにもどんどん取り組み、数多くの収穫を手にしてもらいたいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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