サッカー日本代表が、4大会ぶり2度目の制覇を果たしたEAFF E-1サッカー選手権2022(7月19日〜27日)。国内組で臨んだ本大会であるが、7月27日に豊田スタジアムで行われた最終戦の韓国戦において、日本の良い攻撃シーンを見ることができた。
そのシーンを紐解きながら、11月21日から12月18日に開催されるFIFAワールドカップ・カタール(カタールW杯)に向けて見えた、最後のピースを探っていく。
日本代表VS韓国代表
大会:EAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会
日時:2022年7月27日
会場:豊田スタジアム
結果:日本3-0韓国
日本代表の先発フォーメーションは上図の通り。
前半から見えた縦へのランの意識
得点にはつながらなかったが、良い攻撃シーンが前半32分に見られた。
中央の谷口彰悟(川崎フロンターレ)から、右サイドの水沼宏太(横浜F・マリノス)へ早いパスが通る。ボールを受けた水沼が①のスペースへドリブルで侵入。それに合わせて、小池龍太(横浜F・マリノス)が内側から相手ペナルティーエリア内へ侵入する。そうすることで小池の前後にいる韓国選手2名は小池をカバーするために釣られて動く。すると③のスペースが空き、町野修斗(湘南ベルマーレ)が侵入することができる。
水沼と小池は、同じ横浜F・マリノス所属にてこの動きへの共通認識があったが故と考えられるが、1試合を通して非常に良い関係性であった。このようにサイドバックが内側を取る動きができると、守る側としてはマークする相手が変わり、守りづらくなる。過去の日本代表でこの動きが上手であったのは内田篤人(2020年引退)である。
縦へのランが生んだ先制点
後半3分の先制シーン。
ボールを持った藤田譲瑠チマ(横浜FM)の横を、岩田智輝(横浜FM)が縦にランをしていく。そうすることで岩田を警戒した韓国選手A、B、Cが釣られていく。その空いたスペースを狙う西村拓真(横浜FM)と町野。一番遠いところにいた相馬勇紀(名古屋グランパス)は韓国選手Dとの一騎打ちになる。空いたスペースへの駆け引きによって、背後を取られた韓国選手Dは成す術がなくなる。
このシーンで一番効果的であったのは、岩田の縦へのランニングである。これがないと韓国選手A、B、Cは釣られることなく、しっかり中で守りをすることができる。数的にも守る側有利の状態となる。このように縦に走ることでスペース作りをすることが、前半から繰り返しできていた。
元日本代表監督の岡田武史氏「完璧な崩し」と絶賛
同試合のフィナーレは、後半26分であった。もはや図解での解説は不要であろう。
宮市亮(横浜FM)が外に開いたことで中に空いたスペースを、小池が縦のランで奪う動きをする。それに合わせて、西村に縦ボールが入り、ランした小池へのリターンパス。こうなると韓国守備陣は何もできない。中で待っていた町野が決めるだけだ。小池のランに合わせる形でボールを引き出した西村のプレーも素晴らしかったが、小池の縦へのランで勝負は決まっていた。
解説をしていた元日本代表監督の岡田武史氏(2007-2010)も「完璧な崩し」と絶賛。横浜F・マリノス組による攻撃であったが、非常に完成度の高いものであった。
「水を運ぶことができる選手」の必要性
「水を運ぶことができる選手」とは、故イビチャ・オシム氏(2006-2007日本代表監督)が使っていた言葉である。試合でゴールを決める人を「水を飲む選手」とし、その人へボールを運ぶ人を「水を運ぶ選手」と表現していた。
この韓国戦においては、多くの「水を運ぶ選手」やプレーが見ることができたと言えよう。特に水沼と小池、岩田は積極的に縦へのランを繰り返した。6月の日本代表の試合には見られなかったプレーである。
つまり、このような「水を運ぶ選手」がカタールW杯に向けての最後のピースになるのではないか。そう感じさせてくれたE‐1選手権であった。