●韓国代表との相性の良さ

サッカー日本代表は27日、EAFF E-1サッカー選手権で韓国代表と対戦し、3-0で勝利を収めた。相馬勇紀と町野修斗が得点王に輝き、横浜F・マリノス勢の活躍も目立ったが、11月に開幕するカタールワールドカップに向けたメンバー選考に影響を与えた選手はいたのか。果たして、マリノス勢は今後の日本代表に組み込まれるのだろうか。(文:西部謙司)
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 横浜F・マリノスの6人が先発。中国戦のサンフレッチェ広島セットとは違って、フォーメーションも各選手のポジションもほぼ変わらず、個と連係の両面でクラブチームの力を代表に使えていた。

 最近の韓国代表とは相性が良い。パウロ・ベント監督になってからはGKからパスをつないでビルドアップする方針になっているが、プレッシャーをかけられるとミスを連発してしまう。やろうとしていることに技術が追いついていない。

 一方、森保一監督はまず守備で穴が開かないように選手構成を行い、相手が後方から組み立てるならアグレッシブにプレッシャーをかけていく。日本代表のプレスを韓国代表が外し切れないことがはっきりした時点で試合の流れは決まった。

 ミスがなければ失点の危険はさほどなく、あとは日本代表が韓国代表の4-1-4-1の守備ブロックを攻略して得点できるかどうかが焦点になった。

 後半が始まって4分に相馬勇紀が先制。この時間帯に得点できたのは大きい。韓国代表のビルドアップが機能不全といっても、時間の経過とともに日本代表の運動量が落ちてくればプレスを外してカウンター気味に攻め込むチャンスも出てくる。実際、前半の最後の5分間は韓国が攻め込めるようになっていた。

●W杯メンバー入りへ最もアピールできたのは?

 右サイドへの谷口彰悟の深いパスをきっかけに右サイドで小池龍太がキープして藤田譲瑠チマへ戻すと、ペナルティーエリア右角あたりからファーサイドへ藤田が絶妙のロブを送る。そこへ飛び込んだ相馬がヘディングでニアサイドの上へねじ込んだ。

 サイドの深い場所からボールを戻して逆サイドへのロブというのは定石といっていい攻め方だが、横浜FMの選手にはそのセオリーが染み込んでいるのだろう。クラブチームをセット起用したメリットが出た場面だった。また、そこへ迷わず踏み込んでいった相馬の意欲はこの大会通して表現されていて、横浜FMの組み立てと相馬の貪欲さが結びついたゴールだった。

 先制後も日本代表は手を緩めずに攻める。韓国代表はアグレッシブなプレスを外せないまま。相馬のCKを佐々木翔がヘディングで決めて2-0。そして3点目は横浜FMのコンビネーションから町野修斗が決めてダメ押し。

 小池、藤田、西村拓真が絡んで、裏へ抜け出した小池の低いクロスを町野が至近距離から押し込んだ。流れるようなパスワークはクラブチームの連係そのものだった。

 ワールドカップのメンバー入りという観点で見ると、アピール度が高かったのは相馬だろう。得点とアシストで結果を出し、1対1の突破力、アグレッシブな守備とやれることはすべてやったと思う。名古屋グランパスでデビューした当時からの、チャンスを逃さない勝負強さを示した。

 小池も3点目のアシスト含めて攻守にアジリティと決断力をみせた。左SBもできるのでメンバーに滑り込む可能性はあるかもしれない。

●その他のメンバーの可能性は?

 西村は良いプレーだったが、鎌田大地や南野拓実を超えるほどの活躍かといえば微妙だろう。水沼宏太もスペシャルなクロッサーぶりを見せたが、攻守に奮闘したぶんフィジカル面で厳しい感じも出てしまった。スーパーサブとして選ぶかどうか。素晴らしい資質の藤田に関してもカタール大会のメンバーに入れるかといえば難しそうだ。

 今回のE-1はセット起用された横浜FM勢の活躍が光ったが、日本代表はむしろ川崎フロンターレのセットである。守田英正、三笘薫、田中碧、山根視来、谷口彰悟、板倉滉、旗手怜央、脇坂泰斗と最大派閥になっている。「元」がつく選手だけれども共通のベースがあり、そこへ横浜FMのセットを組み合わせることは考えにくい。

 むしろ個でほしいのは前線でボールを収められるFWだが、ポスト大迫勇也として町野が浮上したものの決定版といえるほどの存在感は示せていない。

 優勝はしたものの、ワールドカップのメンバー選考と強化に大きな影響を与える成果は見いだせなかったのではないか。戦術的に影響を与えられるとすれば鈴木優磨とGK高丘陽平だったと思うが招集されず。従来の日本代表のスタイルに近い横浜FMセットでE-1を乗り切り、Jリーグの力を示せたというのが大会のまとめになる。

(文:西部謙司)

【了】