日本代表は9月23日、ドイツのデュッセルドルフ・アレーナで行われたキリンチャレンジカップ2022でアメリカ代表と対戦。2-0で勝利を収めた。

【映像】 1人でドリブルで仕掛けてゴールまで行ける選手

2022年FIFAワールドカップがあと2カ月弱と迫るなか、限られた出場時間で確かな結果を残したのはMF三笘薫(ブライトン)だ。後半23分、MF堂安律(フライブルク)に代わりピッチに立つと、独特のテンポを刻むドリブルで左サイドを幾度となく突破。攻撃を活性化すると、終了間際の後半43分、左タッチライン際から斜め中央へ切り込み、追加点を奪った。

「(ワールドカップ)本番をイメージしながら、攻撃でアクセントを出せればと思っていた」と自身の投入された意義を振り返る三笘。その前から右サイドではMF伊東純也(スタッド・ランス)のスピードを生かした突破が見られていたが、相手を揺さぶる意味でも左に攻撃の起点を移したのは得策に違いない。現に交代直後から積極的に攻撃を仕掛け、ハーフライン手前からドリブル突破を試みたかと思えば、高い位置で時間を作り味方へパス。自他ともにフィニッシュで終わるシーンを演出した。

この試合で三笘は、川崎フロンターレ時代と同じ背番号18(※)を身にまとった。当時から彼の売りは細かいタッチのドリブル。いつどこで加速するかが読みにくいばかりか、縦への突破をケアされると相手の読みを欺くかのように中へ切り込むプレースタイルだ。
※川崎フロンターレには2019年から2021年のシーズン半ばまで在籍。2019年は背番号32、2020~2021年は背番号18番をつけた。

一般的に、左サイドのポジションにおいては左利きの方が有利とされている。左サイドから見るとゴールの位置は右側にあり、その間には当然相手DFが立ちはだかる。すると右利きにとってはボールを持つ側に相手が陣取る構図となり、どうしてもボールを奪取されやすくなってしまうのだ。無論、相手が右側から寄せていれば左足でボールを保持するなど、プロであればあるほど対策も巧い。ただ、得意を封じられやすいことに変わりはなく、この辺りが日本代表でも左利きのSB伊藤洋輝(シュツットガルト)などが重宝される所以だ。

さて三笘に話を戻せば、彼は右利きのプレーヤーになる。そして得点シーンも例に漏れず、相手DFは右側に注意を払いながら並走していることがわかる。ただ、ここからが三笘の“十八番”とするところだろう、相手がアクションを起こすより先に自分の間合いでドリブル、足を出せない格好になるや否やフィニッシュを決めているのだ。

速さを武器とするプレースタイルや、裏への巧みな抜け出しを見せる選手は他にもいる。ただ、三笘のプレースタイルはなかなか真似できるものではない。その表れか、2021年11月17日のFIFAワールドカップ・アジア予選 最終予選でA代表初出場を飾った三笘は、そこから1年経たずして既に5得点を重ねている。当の本人は試合後、「(得点する前に)チャンスを2、3個逃したので取り返したかった。本番では決め切らないといけないし、1本1本集中して取り組まなければいけない」と気を引き締めた。こうして代表での活躍が続けば、今季所属するブライトンでも明るい話題が聞けるに違いない。そして来る2022年FIFAワールドカップ、川崎から海を越え欧州に渡った青年は、確かな“結果”を掴みに世界へ羽ばたくだろう。


photo:徳丸篤史 Atsushi Tokumaru