引く守備に苦しめられた印象だ

EURO2020終了後、長く代表チームを指揮したヨアヒム・レーヴが監督の座から退き、元バイエルン・ミュンヘンのハンジ・フリックが後任となった。優秀な監督ではあるが、ドイツ代表は勝てておらず、UEFAネーションズリーグでは1勝4分1敗LeagueAGroup3の3位でグループステージを終えた。相手はイタリア、ハンガリー、イングランドと強豪揃いのチームであったが、想像以上に出来が悪い。

ドイツのネーションズリーグでの全6ゲームは似たような内容になることが多く、共通点としてはボール支配率がすべての試合で60%以上の数字を記録している。第5節ハンガリー戦に至っては73%とほとんどの時間でドイツ代表がボールを握っている。

しかしボールを握ること=試合の主導権を握れていたわけではなく、73%のボール支配率を記録したハンガリー戦では0-1と敗れている。

英『The Athletic』では3-3と引き分けたイングランド戦を分析している。そこで挙がった課題の一つはドイツが作ったチャンスの数の少なさだ。イングランド戦では581本と相手を大きく上回るパス数を記録したが、作ったチャンスは2つのみ。対するイングランドは3つ作っている。前節ハンガリー戦もビッグチャンスは1つ、3節のハンガリー戦でも1つだった。後方からのビルドアップや中盤での散らしには長けているが、ボックス内にボールを送り込む場面での質が伴っていない。

その要因となっているのが、純粋な9番の不在だ。イングランド戦では偽9番としてカイ・ハフェルツが入り、終盤にはトーマス・ミュラーがピッチに立った。彼らは動き出しに長けたFWだが、ドイツ代表ではボックス内でゴールを決められるタイプではなく、相手を押し込んだ際効果的な動きは見せられていない。そのため同紙ではドイツは相手の守備のミスか、ハフェルツが決めたミドルシュートのような個の輝きでしかゴールは奪えないとゴール前での怖さのなさを指摘している。

ワールドカップ・カタール大会グループステージ初戦で日本代表はこのドイツと対戦するが、ドイツがネーションズリーグで味わったような攻撃面での難しさを日本も再現できるのか。

第3節でドイツと引き分け、第5節で1-0と勝利を収めたハンガリー代表は[3-4-3]で試合に臨み、守備時は5バックとなって自陣のスペースを消した。スペースを生かしたいドイツからすれば苦しいゲームとなり、1分1敗で終わっている。

このハンガリー代表の戦い方を参考にするのなら、守備時は5バックで自陣のスペースを消すのが得策だ。とくにゴール前に人を集め中央さえ突破されなければ同紙が主張するようにゴール前での怖さはない。ただ日本代表はアメリカ戦で[4-2-3-1]を使って成功しており、おそらくエクアドル戦でも同様のシステムを使う。守備時はハイプレスがベースであり、前田大然、鎌田大地らの第一陣が突破されれば難しい状況になる。向かってくる相手に対してドイツ代表は滅法強く、バイエルンのジャマル・ムシアラは素晴らしい足技で簡単に一人や二人をかわすことができる。

イングランドやハンガリーが見せた対ドイツの戦術は引いたカウンターだったが森保ジャパンはおそらくハイプレス・ショートカウンターを選ぶだろう。そうなった際はネーションズリーグで感じた息苦しさをドイツ代表が感じる可能性は低く、ハイプレスをひっくり返されてしまう可能性がある。そうなった際に自陣に引ける守備を選択し、ドイツ代表に圧をかけられるかが重要になる(データは『SofaScore』より)。