バルセロナ一筋20年、数々のタイトルを獲得
言わずと知れた世界最高の選手の1人がアルゼンチン代表であり、パリ・サンジェルマン所属のリオネル・メッシだ。
メッシに関する記録を挙げれば枚挙にいとまがない。バルセロナ時代には10度のラ・リーガ、7度のコパ・デル・レイ、4度のUEFAチャンピオンズリーグを制覇。クラブ史上最多となる35個のタイトルを獲得した。
ゴール数もクラブ歴代通算最多となる672ゴール。ラ・リーガ通算474ゴールも歴代最多ゴール記録であり、チャンピオンズリーグ歴代最多ハットトリック記録、ラ・リーガ歴代最多アシスト記録(192アシスト)を保持している。また、歴代最多7度のバロンドールを受賞し、6度のチャンピオンズリーグ得点王と歴代最多6度のゴールデンシューを獲得し、多くのサッカー関係者や選手に世界最高峰のサッカー選手と称されている。
メッシとバルセロナの蜜月は彼が13歳の時から始まった。17歳となった2004年10月16日、第7節エスパニョール戦でラ・リーガデビューを果たすと、2005年5月1日の第34節アルバセテ・バロンピエ戦で初得点。17歳10カ月7日で決めたこの得点は、ボージャン・クルキッチ(17歳51日)に破られるまでクラブ史上最年少記録だった。その後、チーム内での存在感を高めた2008-09シーズン、ミランへと移籍したロナウジーニョに変わって背番号10番を背負うことになった。
2012年には、公式戦69試合に出場し91得点を記録。1972年にゲルト・ミュラー氏が作った、公式戦年間最多ゴール記録(85ゴール)を40年ぶりに塗り替えた。さらに2011-12シーズン、ラ・リーガでシーズン37試合50得点を記録。当然ながらラ・リーガの最多記録更新となり、さらには1976-77シーズンにルーマニア1部のディナモ・ブカレストでドゥドゥ・ゲオルゲスク氏が樹立した47得点の欧州リーグのシーズン最多得点記録をも更新したのだ。
メッシとバルセロナ。数々のタイトルを手にしてきた両者だが、ついに別れの時を迎える。2021年8月10日、20年間在籍したFCバルセロナを離れ、パリ・サンジェルマン(PSG)へと移籍。慣れ親しんだ背番号10はブラジル代表ネイマールがすでにつけていたため、バルセロナのトップデビュー時と同じ30番に決まった。PSGではネイマール、エムバペと共に強力FW陣を形成し、メッシは3トップの右を務めている。2022年4月23日、第34節のRCランス戦では得点をきめてチームの2年ぶりとなるリーグ優勝に貢献した。
繊細なボールタッチと決定力で見るものを魅了する
一瞬のスピードで抜き去ったかと思えば、卓越したボールコントロールで右へ左へと相手をいなす。最後は“黄金の左足”を一閃。次の瞬間にはゴールネットが揺れている。まるでゲームの主人公のようなプレーを見せてくれるのが、メッシだ。
メッシのプレースタイルは一言では言い表せない。圧倒的なドリブルスキルでいとも簡単に相手を抜き去る。ボックス内ではゴールハンターとなり、中盤の位置に下がれば正確なミドルレンジパスを通すチャンスメーカーとしてプレーする。ポジションについても左右のウイング、トップ下、センターフォワードなど攻撃的な場所であればどこでも起用可能。何をやらせても上手いというわけだ。
169cmと決して恵まれた身長とは言えないが、決してフィジカルに難がある訳ではない。バランス感覚にも秀でており、相手がメッシを潰そうとファウル覚悟の激しいタックルを見舞っても簡単に倒れることはない。彼のドリブルを止めることは不可能なのだ。
動いているボールの処理がこれほどまでに得意なのだから、止まっているボールはなおさらだ。メッシはプレースキッカーとしても優れており、これまでも数々の美しい直接FKを決めてきた。全てが異次元。全てが完璧。それがメッシなのだ。
唯一獲得できていないワールドカップのタイトル
メッシはアルゼンチン代表としても早くから活躍してきた。2005年に行われたワールドユース選手権に出場すると、得意のドリブルと決定力でアルゼンチン代表を牽引。大会を通じて6ゴールを奪い、得点王とMVPを獲得する活躍を見せた。この活躍は、フル代表を率いるホセ・ペケルマン監督の目に止まり、同年8月にデビューを果たした
アルゼンチン代表では、背番号10を背負い、主にトップ下を務めてきた。当然のように同国代表の最多得点記録保持者であり、最多アシスト記録の保持者でもある。
2008年には北京オリンピックに出場し、金メダルを獲得。2010年からはキャプテンを務め、2014年のブラジル・ワールドカップではアルゼンチンの準優勝に貢献し、大会MVPにあたるゴールデンボールを受賞した。
さらに2018年のロシア・ワールドカップでも新たな記録を作り出す。1つ目は、アルゼンチン代表のワールドカップの大会連続ゴール記録。グループリーグ最終戦のナイジェリア戦でゴールを決めたことで、アルゼンチンではディエゴ・マラドーナ、ガブリエル・バティステトゥータのレジェンドに並んで3人目となるワールドカップ3大会での得点を達成した。もう1つは、10代、20代、30代とそれぞれの世代での得点。これはワールドカップ史上初の記録となっている。
2021年に行われたコパ・アメリカでは、7試合で4ゴール5アシスト。得点王、アシスト王、MVPの"個人賞3冠"を達成し、アルゼンチンを28年ぶりの優勝に導いた。また南米全てのチームからゴールを奪った史上4人目の選手であり、W杯南米予選で通算21ゴールを記録している南米予選歴代最多得点者でもある。
名実ともに世界最高峰の選手であるメッシだが、ワールドカップのタイトルだけは唯一獲得できていない。年齢的にも今大会が最後のワールドカップとなる可能性が高く、カタール大会へかける意気込みは並々ならぬものがあるだろう。メッシの活躍が、アルゼンチン代表が優勝するための鍵を握るだけに、どんなプレーを見せてくれるのか世界中が注目している。
文・渡邉知晃
- 写真:AP/アフロ