日本代表は9月27日、ドイツのデュッセルドルフで行われたキリンチャレンジカップ2022でエクアドル代表と対戦。0-0で引き分けた。
この試合、スコアレスで前半を折り返すと、指揮官は後半開始と同時に1枚の交代カードを切った。FW古橋亨梧(セルティック)に代わって投入された、FW上田綺世(サークル・ブルッヘ)だ。上田と言えば、エクアドル戦の2日前に行われたアメリカ戦ではベンチ外という辛酸を舐めている。この日も先発からは外れたが、チーム内では最初の交代選手とあって、流れを変える働きに期待がかかった。
そんな機運を彼自身もしっかり噛みしめていたのだろう、立ち上がりから攻守へ積極的に顔を出し、ファウルの判定をもらうことこそあれども、ベルギーで鍛えられたフィジカルの強さも見せつけた。後半12分にはMF三笘薫(ブライトン)へパス、チャンスの起点を担うと、後半途中で入ったMF鎌田大地(フランクフルト)やFW相馬勇紀(名古屋グランパス)とも息を合わせプレー。際どいシュートや味方のFK獲得に繋がる配球を見せた。
試合後、上田は「戦うところだったり、インテンシティのなかでパフォーマンスを発揮するという点では、日本にいた時より高いなかでできている分、ぶつけるところや、スピード感に遅れをとることはなかった」と、限られた出場時間のなかで得た手応えを口にした。もちろん、現状に満足しているわけではない。「その中で圧倒する、ボールをキープする、シュートまで持っていくところは、惜しいシーンはあったけど、もっと回数を増やしていかないといけない」と、欠かさず反省の意を加えた。
言うまでもなく、FWは得点という数字を求められる立場にある。その点からすれば、無得点で終わったこの試合は上田に限らず顧みる節があるだろう。ただ、一見矛盾するような言い方ではあるが、いかなるFWも一人で点を取ることはできない。自陣にいるゴールキーパーの配球をワンタッチでゴールできるほどピッチは狭くもなければ、仮にハーフラインからだとしても一人“だけで”ゴールをこじ開けるのは至難だ。すなわち味方との連携は必至であり、その点で上田は随所で光るプレーを見せたとも取れる。
実はエクアドル戦の前日、メディア対応の場で彼は連携面の重要性について触れている。「スペースメイクをするのは僕の役割だと思うので、例えば動き出しやポストプレー含め、トップ下の選手がプレーしやすいようにすることが、また自分のプレーしやすいタイミングを作りやすくするキッカケにもなります。お互いの特長を理解しながら取り組んでいきたいです」と、一見優しさとも取れる代表戦士同士の計らいに言及しているのだ。
もちろん、最終的に掴み取らんとするのは、彼においても2022年FIFAワールドカップへの出場そして勝利という「結果」だ。さらに言うならば、上田の胸中には“国際Aマッチでの得点”への渇望があるに違いない。これまで出場したAマッチは2019年から数えて10試合、いずれもゴールが奪えていない。この日の試合後も「もっともっと徹底して、細かいところだけどああいうの(みたいなチャンス)を沈められるようにしていきたい」とコメントした通り、“あと一歩”をファン・サポーターだけでなく本人も待ち望んでいる。
思えば2022年7月と僅か数か月に鹿島アントラーズを離れ、欧州へ渡った上田綺世。慣れ親しんだクラブに別れを告げた夏を報う、“熱い冬”がやってくることを願ってやまない。
photo:徳丸篤史 Atsushi Tokumaru