11月20日に幕を開けるカタール・ワールドカップ。4年に一度の大舞台では、どんな戦いが繰り広げられるか。本稿ではグループ毎に出場国とグループステージ展望を紹介。今回は、開催国カタールが組み込まれたAグループだ。

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■カタール
(初出場)

 過去にW杯の出場がない初めての開催国となるが、前回アジアカップ決勝で日本を破ったアジア王者であることを忘れてはいけない。

 プレW杯となるアラブカップは準決勝でアルジェリアに1-2で敗れたが、エジプトとの3位決定戦を制して3位に。アフリカの強豪にも太刀打ちできることを示した。

 何より気候や環境だけでなく、欧州リーグなどが開幕の1週間前まで中断しない期間に、準備で大きなアドバンテージを得ることができそうだ。バルセロナの育成部門で指導者の経験を積んだフェリックス・サンチェス監督が、主力メンバーのほとんどをアンダー世代から見てきているのも大きい。

 基本的に3-5-2で後ろから丁寧につなぐが、前線のアクラム・アフィフやアルモエズ・アリをシンプルに使う形もある。特にボールの支配力で劣勢になりそうなオランダ戦でどういうゲームプランを描くのかは注目だ。
 
■エクアドル
(2大会ぶり4回目の出場)

 南米勢の中ではやや軽視されているかもしれないが、どの対戦相手にも厄介な相手になりうる。チームとして堅実で粘り強い守備から、テクニカルなカウンターを駆使するスタイルは一貫しており、組織が崩れる心配はほとんどない。

 実際に南米予選でもブラジルやアルゼンチンと引き分け、6月の親善試合ではナイジェリアに1-0勝利、メキシコとはスコアレスドローだった。日本も9月の対戦で0-0と引き分けた。

 守備時は4-1-4-1、攻撃時は4-3-3がベースとなるが、ダブルボランチを採用する試合もある。CBのピエロ・インカピエ、アンカーのカルロス・グルエソ、FWのミカエル・エストラーダなど、デュエルに強いタレントがセンターラインに揃う。

 ただ最大の注目選手は、ブライトンで三笘薫のチームメイトでもある20歳のモイセス・カイセド。中盤でボールを奪ったところからのショートカウンターは脅威だ。10年来エースを担ってきたエネル・バレンシアも32歳となったが、勝負強いジョーカーとして牙を研ぐ。
 
■セネガル
(2大会連続3回目の出場)

 2002年日韓大会のベスト8が記憶に残るが、チーム力は当時よりはるかに上だ。

 最新のFIFAランキングはアフリカ勢で最高の18位。そして主力にはバイエルンの新エースであるサディオ・マネ、ともにチェルシーのCBカリドゥ・クリバリとGKエドゥアール・メンディなど、欧州サッカーのファンなら誰でも聞いたことがある名手がズラリと並ぶ。

 やや力が劣ると見られるカタールが同居していることからも、セネガルにとってはチャンスかもしれない。ネーションズリーグのために欧州の列強がアフリカ勢と試合できていないことも利用すれば、グループAの本命と見られるオランダから勝利してもおかしくない。

 4-3-3をベースとする左ウイングにマネがいるため、相手のディフェンスは絶対的なエースに引っ張られやすい。しかし、セネガルはマネだけのチームではなく、右には破壊的な突破力を誇るイスマイラ・サールがいる。

 FWケイタ・バルデが薬物違反で欠場確定と報道されているのはひとつ不安要素だが、有力候補は26人から漏れるほどおり、アフリカ勢として未知の4強入りも可能なポテンシャルがある。
 
■オランダ
(2大会ぶり11回目の出場)

 前回の予選敗退から世代交代を経て、2014年のブラジル大会で同国を3位に導いた老将ファン・ハール監督のもとで、悲願のW杯制覇へチームの再構築を進めてきた。

 抽選会はポット2に回ったが、実力は侮れない。欧州リーグの中断から開幕戦まで時間はないものの、セネガルとの初戦を乗り切れば、日程的にファイナルまでの逆算はしやすい。

 マタイス・デ・リフトが統率する3バックと、フレンキー・デ・ヨングが仕切る4枚の中盤で多角的にボールを回していくスタイルは変わらないが、前の3枚は並びも含めて、試合ごとに使い分ける可能性もある。

 メンフィス・デパイ、ドニエル・マレン、ステファン・ベルハイスと非凡なアタッカーは揃うが、クラブレベルの活躍も含めて、本当の意味で“核”と呼べるスーパーエースはいない。それを逆に相手チームが読めない要素として利用しながら、本大会でブレイクする選手を期待することになりそうだ。
 
【グループA展望】
 普通に考えれば、大本命はオランダだ。ただし、アフリカ随一の攻撃力を誇るセネガルが初戦の相手となるだけに、準備もままならないなかで敗戦のリスクは大いにあると見ている。

 フランスと一緒で、いわゆる「お家騒動」のリスクを伝統的に抱えている国でもあるので、他国以上に初戦でうまく入れるかどうかがカギになる。逆に初戦をすんなり乗り切れるようだと、首位突破で決勝トーナメントを有利に戦える流れが見えてくる。

 開催国のカタールにとって初戦の相手エクアドルはかなりの難敵だが、大半の国が、事前合宿が1週間も張れない今大会のレギュレーションを考えると、国内リーグの選手で構成されるカタールはかなり有利だ。
 
 当初の予定より1日前倒しされる開幕戦で、衝撃的な勝利を掴むことができれば、セネガル、オランダと続く戦いで勢に乗りそうだ。

 エクアドルは南米予選でもアルゼンチンやブラジルに粘り強い戦いをしているだけに、オランダ相手にも無様な試合にはならないはず。順番をつけるならオランダ、セネガル、エクアドル、カタールとなるが、開催国のホームアドバンテージも含めて非常に読みにくいグループでもある。

文●河治良幸

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