いよいよ開幕が迫るカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はMF伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス/フランス)だ。
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カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で、4ゴール・2アシストのほか、PK奪取など日本の全12得点の半分以上に絡んだのが、「イナズマ純也」の異名を取る伊東純也だ。
「自分の特長はアシストとかチャンスメイクの部分だと思ってるし、得点を取るタイプではないので、自分でも驚いてる感じではありますけど。
まあ、毎試合、ゴールには絡んでやろうと思っているので、それが上手く結果に出ているのかな」と、最終予選期間中にも語っていた。今夏赴いたS・ランスでもすでに4ゴールを挙げているのを見ると、決して得点感覚がないわけではない。本番はその能力を存分に発揮してほしいものである。
周知の事実ではあるが、伊東は2015年に甲府入りするまで、全くと言っていいほど無名の存在だった。
初めて日の丸を背負ったのは、柏時代の2017年12月のE-1選手権。右のチャンスメーカーとして存在感を示したが、直後の代表定着は叶わず、本格的な参戦は2018年9月の森保ジャパン発足後にズレ込んだ。
だが、当初は堂安律(フライブルク)の控え。「右のジョーカー」として終盤に出てくるだけ。そういうなかでも、初陣のコスタリカ戦、続くパナマ戦で連続ゴールと「出てきたら得点に絡む」という印象はキッチリと植え付けた。
そんな伊東の序列を大きく引き上げたのが、2019年2月のヘンク移籍と、2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)参戦だ。
長友佑都(FC東京)が「CLに出るのはまた違った経験」と言うように、世界基準を知らなかった彼にしてみれば「結構やれる」という感触を掴む貴重な機会となった。
それが代表にも還元され、3アシストを記録した19年10月のモンゴル戦あたりから森保監督の評価も急上昇。堂安がPSVで出番を得られず、東京五輪の活動優先になったことが重なり、「右のジョーカー」から「絶対的主力」へと一気に上り詰めていく。
それを確実にしたのが、20-21シーズンのヘンクでの公式戦42試合出場、12得点・16アシストという目覚ましい数字である。
「実際プロになってからは、壁っていう壁は感じたことがない」と飄々と言ってのける伊東らしい爆発的な成長曲線を描き、最終予選での救世主的な活躍につなげていったのである。
「コロナ禍がなければ、もっと早く欧州5大リーグからオファーが届いていただろう」とシント=トロイデンの立石敬之CEOも太鼓判を押す伊東にとって、今回のS・ランス移籍は遅すぎたかもしれない。
それでも、ベルギーでは感じられない強度や個の力を短期間でも体感できたのは、カタール本番に向けて良い経験になったはずだ。
「ワールドカップのエース? 日本では本田(圭佑)さんのイメージがありますよね。何だかんだで点を取るのはホントに凄い。
本田さんのゴールで一番覚えているのは、(2010年南アフリカW杯の)デンマーク戦のFK。俺はまだ学生だったと思いますけど、テレビで見てて『すげえ』って」と目を輝かせた伊東も、ここ一番の集中力とマイペースという点では通じるものがある。
しかも背番号14の前任者は、前回のロシアW杯で2得点の乾貴士(清水)である。「イナズマ純也」は偉大な先輩たちの系譜を受け継ぐべき存在なのだ。
世界に通じるスピードを持つこの男が、縦へ縦へと推進力を見せなければ、ドイツ・コスタリカ・スペイン相手の下剋上はありえない。日本の成否は伊東にかかっていると言っても過言ではない。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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