いよいよ開幕が迫るカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はMF相馬勇紀(名古屋グランパス)だ。
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「僕のドリブルは(三笘)薫とはまた違ったタイプだと思うんで、薫のプレーはリスペクトしながら、試合に出ることができたら、自分の良さを出していけたらなって思っています」
今年7月のE-1選手権でのMVP獲得をきっかけに、カタール・ワールドカップ(W杯)の日本代表メンバー26人に滑り込んだ相馬勇紀。彼にとって、大学時代から切磋琢磨してきた三笘は、常にライバルであり、最高の仲間だ。
2021年夏の東京五輪では、三笘が負傷で出遅れたこともあり、相馬が6試合中3試合に先発。だが、先に欧州へ赴いた三笘に差をつけられる格好となった。現時点での序列も三笘のほうが上なのは確かだが、左右のサイドをこなせて、迷わずゴールへ向かっていける相馬は、また違った武器を持つ選手。ゴール前の得点感覚やプレースキックの精度を含めて、本番では新たなジョーカーとして期待されるところだ。
三菱養和SCユースから早稲田大に進んだ相馬が、森保一監督率いるU-22日本代表に初招集されたのは、2019年のトゥーロン国際大会(現モーリスリベロ・トーナメント)。
「特にオンの仕掛けができる選手。自分がゴールに向かっていく、決める部分、パスを配球することもできる選手」と森保監督は高評価。それに応えるかのうように、3試合出場1ゴールとチームの準優勝に貢献。ベストイレブンにも選出されるという華々しい国際舞台デビューを飾った。
相馬は大学4年だった2018年に特別指定で名古屋の試合に出場。翌年から正式にプロキャリアをスタートさせたが、この時点ではまだ出たり出なかったりで、夏以降は鹿島アントラーズにレンタルされた。
そんな状況でも指揮官は彼のインパクトが大きかったのか、同年12月のE-1選手権であえて抜擢。A代表デビューさせた。そこでも相馬は強烈な打開力でチームの流れを変える仕事を披露。本番に強いところをしっかりとアピールしてみせた。
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こうした実績と経験が弾みになったのか、2020年に復帰した名古屋でようやくレギュラーを奪取。2021年もコンスタントなプレーを見せ、サイドアタッカーの地位を確立。最初の目標だった東京五輪出場を達成した。
しかしながら、前々から公言していた海外移籍がなかなか実現しなかったこともあり、A代表定着とカタールW杯行きは険しいと見られた。
物事を冷静に客観視できる賢さを備える相馬は、「今の自分は当落線上より下」とストレートに表現。千載一遇のチャンスとなった今年7月のE-1に全てを賭けた。
その結果、3ゴール・2アシストの大活躍。3大会ぶりの優勝の原動力となるとともに、MVPと得点王をダブル受賞。“逆転代表”の道を切り開いた。
そして最終テストと位置づけられた9月のエクアドル戦でも、67分から三笘と代わって登場。流れを引き寄せる効果的なプレーを見せつけ、ラストピースとして26人枠を勝ち取ることに成功したのである。
1人で緩急をつけながら、3人、4人と相手をはがしていく三笘と、直線的なドリブルを得意とする相馬の2人がいれば、攻撃のバリエーションを広げられる。
そういう計算が森保監督の中ではあったのだろう。揃って持ち味を発揮し、敵をキリキリ舞いにしてくれれば、まさに理想的なシナリオだ。
夢だった海外移籍のチャンスを掴むためにも、カタールの大舞台を活かさない手はない。同じ名古屋から日本のエースへと飛躍した本田圭佑のように、W杯で大化けしてほしいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)