日本代表はカタール・ワールドカップ開幕前、最後となる対外試合を終えた。あとは23日のドイツ代表戦を待つばかりだ。準備試合のカナダ代表戦で何が見え、大会初戦までにあとは何をするべきか、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り尽くした。
■終盤のシステム変更
――中盤の底に入る選手にケガ人が多く出ていますが、鎌田大地のボランチ起用は本番でも有効なオプションになりますか。
後藤「鎌田を使うべきか、あるいは板倉滉をボランチで使うべきか」
大住「見ていて、それはあり得ると思ったね」
後藤「だから、板倉の状態が良かったことが、この試合の最大の収穫なんだよ」
大住「さすがに無理をするようなプレーはなかったけどね」
――終盤にフォーメーションを3-4-3に変更した後にも、チャンスが生まれていました。
後藤「山根視来はヒーローになりかけたのになあ」
大住「試合を同点のまま終わらせるために3バックにしたんじゃないかと言う記者もいたけど、この試合を見る限りは攻撃するための3バックだと思った」
後藤「それは間違いない」
大住「攻撃の選手である南野拓実に代えて、守備の選手の吉田麻也を入れたけど、両ウィングバックが上がって前線の3人はかなり中に絞ってと、攻める選手の数が増えたからね。攻守両面の意味があるシステム変更ではあるけど、攻撃に重きを置いて、得点して勝とうという意欲のある3バックだと思った」
後藤「間違いない。以前には原口元気を入れて5バックにして試合終わらせるというシステム変更はあったけど、今回のは間違いなく攻撃のためだったし、効果もあったもんね。今まで、あんなにうまくいっていなかったよね。攻撃のためのシステム変更をして、あれだけゲームが変わったというのは初めてじゃないかな、というくらいに僕の記憶にはないことだった」
大住「攻撃はすごく良くなったよ。でも点を取られちゃったけど」
後藤「結果はそうだったけど、試合中にシステム変更をすること自体が今までほとんどなかったし、この試合では非常にうまくいったのは確かだよ」
大住「山根は4バックの時は遠慮気味だったけど、3バックになった途端、得意のインサイドのランニングでチャンスをつくった。それもまた、この試合の数少ないポジティブな収穫のひとつかな」
■もったいなかった久保
――他に、気になった点はありますか。
大住「久保建英だね。久保がもったいないな、という感じなんだよね。何であんなに、外に張り付かせているのかな。前半の終わり頃に右サイドまで進出したり、あるいはトップ下みたいなところでプレーしていたけど、守備になると元のポジションに一生懸命戻っていた。両サイドの攻撃的な選手にも、かなり守備のタスクが課されているんだろうなと感じた」
後藤「日本がボールを持っている時間には、久保もそういう動きができたんだけどね。後半はバタバタになって、できなくなっていた」
大住「もっと前線を流動的にした方がいいと思うんだよね。でも、久保がトップ下や右に進出した時にも、南野拓実は久保が空けたポジションを埋めようとしなかった。久保はもっとトップ下、あるいは2トップみたいな形でプレーする時間が増えた方がいいなと思うから、どうにかしたらいいんじゃないかと思うんだけど」
後藤「鎌田がボランチになるなら、久保をトップ下で起用すればいいよ」
■守備とのバランス
大住「久保が左サイドに張り付いて、縦に行くか内に行くだけなら、三笘薫を起用した方がいいかな。久保は偽左ウィングというか、以前に香川真司がやっていたように、あそこから内に入っていって最後の崩しのパスを出すとか、シュートを打つのが、本当は一番の持ち味だと思うんだけど」
後藤「今回のメンバーで久保がそれをやっちゃうと、南野がすごく守備をするわけじゃないし、田中碧は状態が悪かったし、後ろにいるのはあまり経験のない伊藤洋輝だから、左サイドの守備ができなくなってしまったんじゃないかな」
大住「南野は、守備をよくやっていたんだよ。ただ、久保の空けたポジションを埋めないなあと思いながら見てはいた」
後藤「久保自身も、日本がボールを持てている時間ならポジションを変えても良いけど、攻められている時間には守備をするしかないと覚悟を決めたんじゃないかな」
大住「久保は体も大きくなったよね。背が伸びたんじゃないかと感じるくらい」
後藤「ゴール近くでうまく相手からボールを奪ってシュートをした場面があったけど、守備に入っていくタイミングが非常に良かった。FC東京のU-18にいる頃にも、守備に行くタイミングが本当にうまい選手だなと思った記憶があるよ」
大住「いつ足を出すかタイミングが分かっているんだよね」
後藤「右と左、どちらから行くと相手が嫌がるかも考えている」
大住「考えているし、本能的にも分かっている。それも才能だと思う」