サッカー日本代表は23日、カタールワールドカップのグループステージ初戦でドイツ代表に2-1の逆転勝利を収めた。

 後半から途中出場したMF三笘薫が、持ち味のドリブルで逆転への道を切り拓いた。57分からピッチに立った背番号9は、3-4-2-1のウィングバックに入って躍動。「雰囲気にちょっと慣れないところがあって、ファーストプレーは慎重にいかないと流されるなと思ったので、自分と会話しながら入ってました」と語るが、そんな様子は微塵も感じさせない振る舞いでドイツ代表選手たちに堂々と渡り合った。

「まずは失点しないことが大事なので、ウィングバックで入り、中を締めながらボールを持ったらカウンターで出ていくことを意識していました」

 守備時はディフェンスラインまで戻り、逆サイドからのクロスにはしっかりと中央に絞ってマークを怠らない。昨季所属したロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズで左ウィングバックに挑戦した経験がワールドカップの舞台で生かされた。

「もちろんユニオンでのイメージを持ってやっていたところもあります。しっかり後ろに入り込んで、前向きの守備をして、(攻撃の)スイッチを作るというのをやっていました。最初の位置が後ろになる分、前への力はうまく出せたと思っています」

 反転攻勢に出る際に、三笘がドリブルでボールを持ち上がるとスタジアムの雰囲気が一変した。何かを起こしてくれるのではないか。そんな期待が会場中に充満していた。そして、1点ビハインドで迎えた75分に同点ゴールが生まれる。

 左サイドでドリブルを始めた三笘は、ペナルティエリア左角までボールを運ぶと、さらにカットインすると見せかけてパスを選択。内側を追い越してきたMF南野拓実に絶妙なスルーパスを通し、そこからMF堂安律のゴールへとつながっていった。

「最初の(ニクラス・)ズーレ選手の対応を見て、縦を警戒するのはわかっていました。次も縦を切っていましたし、中に食いついてくる瞬間にギャップができた。そこに拓実くんが素晴らしい動きをした。その後は僕の力ではないですし、拓実くんのシュートの可能性を信じて(堂安)律も入りましたし、チームとしての結果だと思います」

 そう謙遜するが、三笘が相手の脅威となったことがゴールのきっかけになったのは間違いない。ブンデスリーガ屈指のDFとして知られるズーレも、日本の9番の懐にはうかつに飛び込めず、距離をとって対応する判断をした。三笘にとっては願ったり叶ったりだ。

「高い位置を取ることで相手を引きつけて、後ろのスペースを作ろうと思っていました。ウィングバックでしたけど、意図的にウィングぐらいの立ち位置を取って、後ろのスペースを作ることと、自分たちの流れに持っていけることは考えていました」

 ズーレを釘づけにしながら、単独突破でのチャンスメイクのみならず、ボールをキープして味方が動くための時間を作るプレーも光った。1年前の三笘なら縦への仕掛けが最初の選択肢だったが、今は違う。ドリブルを仕掛け続けたことによって相手の対応にも変化が生まれ、ボールを持つだけで試合に一瞬の「間」を作れる選手へと進化を遂げている。

 三笘本人も「ボールを持つことで相手の視線も集中しますし、その分、周りの動き出しやすさも作れたと思うので、よかったと思います。時間を作ることで、前半から出ている仲間も休める。しっかりと準備する意味でも、(時間を作れるように)意図的にプレーしていました」と、単なるチャンスメイクにとどまらないドリブルの重要性を明確に意識している。

 森保一監督が「彼自体が戦術」と発言したことで、「戦術・三笘薫」という言葉が流行った時期もあった。いま改めてそのことについて三笘に問うと、ニヤリと笑いながら「日本だけだと思いますよ。そう言っているのは」と述べた。

 だが、ドイツ代表戦の後半に関しては確かに三笘という個が「戦術」として機能していた。プレミアリーグでの活躍によって自信を深める背番号9の威力は、間違いなくすでに世界にバレている。

 そして、今後はより一層警戒が強まるだろう。その厚くなった壁を三笘がどのように破っていくか、世界の舞台でのさらなる進化に期待したい。

(取材・文:舩木渉)

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