11月23日のドイツ戦で2-1の逆転勝利を収めた日本代表。史上初の“ワールドカップ8強”に向けて大きな一歩を踏み出した。しかし、27日の次戦・コスタリカ戦で勝点を取り損ねれば、一気に形勢が悪化しかねない。失敗は許されないのだ。

 そんな重要なゲームを前に、酒井宏樹(浦和)、冨安健洋(アーセナル)という守備のキーマンの欠場が決定的となった。ドイツ戦に先発した酒井は、ヘディングの折り返し時の着地で右太ももを痛めたようで、途中出場の冨安は、前々からの負傷を悪化させた形。いずれにしても歴史的勝利の代償なのは間違いない。

 最悪の場合、コスタリカ戦のみならず、12月1日のスペイン戦も2人抜きで戦うことになりそうな雲行きだ。大会前の中山雄太(ハダースフィールド)の離脱を含め、DF陣の怪我が相次いでいる現状に、森保一監督も頭を痛めているに違いない。

 さしあたって、直近のコスタリカ戦だが、最終ラインは右から山根視来(川崎)、吉田麻也(シャルケ)、谷口彰悟(川崎)、長友佑都(FC東京)の並びが有力視される。

 このうち、右サイドに関しては、W杯予選プレーオフのニュージーランド戦で決勝点をお膳立てした18歳のドリブラー、ジェウィソン・ベネット(サンダーランド)が対面に陣取ると見られる。国際経験の少ない山根が対峙するとなれば、やや不安も伴う。
 
 それをサポートするため、やはり吉田か板倉滉(ボルシアMG)のいずれかが連続先発しなければならないだろう。ただ、板倉は左膝の長期離脱から復帰したばかりで、17日のカナダ戦とドイツ戦で連続フル稼働。負傷箇所の状態、疲労蓄積が懸念される部分もある。ゆえに今回は経験豊富な吉田が声掛けをしつつ、カバーしていく必要があるだろう。

 もう一枚のCB谷口もW杯初出場となるため、やはり左SBには百戦錬磨の長友がいたほうが落ち着く。後半から伊藤洋輝(シュツットガルト)と代わるにしても、スタート時は大ベテランに引き締めてもらい、隙のない守備組織を構築することが肝要だろう。

 コスタリカはホエル・キャンベル(レオン)とアンソニー・コントレラス(エレディアノ)の2トップがベースだが、得点を取って勝たなければいけない試合ということで、ルイス・フェルナンド・スアレス監督も何らかの秘策を講じてくる可能性はある。

 同国の精神的支柱と言っていいブライアン・ルイス(アラフエレンセ)の早い時間帯の起用もあるかもしれない。

【W杯PHOTO】30度を超える炎天下の中…コスタリカ戦に向け元気にトレーニングを行う日本代表!
 
 出方の読めない相手に対して、日本はまず戦い方をしっかりと見極め、的確な対応をしていく必要がある。吉田、長友を中心に意思統一を図り、隙を作らない盤石な形を示してほしいものである。

 ただ、この陣容だと板倉、伊藤の2人しかDFのバックアップがいない状態になるため、さらなるアクシデントが発生した時が心配だ。森保監督は以前「相馬も左サイドバックはできる」といった発言をしていたが、MF陣のイレギュラーな使い方も想定しておく必要がありそうだ。
 
 場合によっては、DFとしての実績も豊富な遠藤航(シュツットガルト)を後ろに下げる、あるいは川崎時代に右SBの経験もある守田英正(スポルティング)を最終ラインに入れる形も頭に入れておくほうがベターではないか。どんな突発的な出来事が起きても乗り切れるだけの緻密な準備がなければ、ベスト8の壁は破れないのだ。

 いずれにせよ、「中山の代役はDFを本職とする選手を呼んでおくべきだった」という結果にならないように、現有戦力で苦境を乗り切ることに集中すべき。酒井と冨安の早期復帰を促しつつ、手薄な守備陣がチームの足かせにならないようなマネジメントを森保監督には強く求めたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)