カタール・ワールドカップのグループリーグ初戦、ドイツ戦に劇的な逆転勝利を挙げた日本代表で、選手たちが口を揃えていたのは切り替えの大切さであった。
長友佑都が「一番大事なのは勝ったからと言って油断せずに、気を引き締めること。次に負けてしまうと意味がないというか。もう一回引き締めてやりたい」と語れば、「ここで下手な踊りは見せられない。ワールドカップに出る国で楽なチームはない。中途半端な気持ちで臨むと一気に飲まれる」とキャプテンの吉田麻也はメッセージを送ったが、やはり会心の勝利のあとのゲームは難しいものだった。
序盤こそ日本はドイツ戦で得た勢いを生かして攻め込んだが、5バックを敷く相手をなかなか崩し切れない。焦りも生じたのだろう、ミスも増え、嫌なボールの失い方をしてリズムを崩す悪循環。
前半途中からはドイツ戦での起死回生の策となった3-4-2-1への変更を決断し、後半は攻撃的なカードを切りながらチャンスも作ったが、モノにできない。すると、81分にはワンチャンスを生かされて失点。サッカーの怖さを思い知らされる結果となった。
「(ドイツ戦からの)3日間、この試合は間違いなく難しくなると思っていましたし、そのなかで自分自身もチームも『準備ができているか』と問い続けてきました。ただこれがサッカーの難しさだなと改めて感じています。分かっていましたが、一番起きてはいけない展開になってしまった。今はスペイン戦へしっかりやっていくのみ。まだ何も終わっていませんし、変わらずに勝点を取りにいきたいです」
失点につながるクリアをしてしまった吉田も厳しい表情で試合を振り返る。
勝って兜の緒を締めるというのは、ワールドカップという大きな大会になればなるほど難しいものなのだろう。しかも、ドイツに勝ったからこそ、自信とともに、どこか気持ちに緩みが生じてもおかしくない。相手は初戦でスペインに0-7で敗れていたことを考えればなおさらだ。
万全の準備をしてきたはずだったが、“野心”をテーマに特に前線にはワールドカップ経験者のいないフレッシュな陣容で臨む今大会の日本は、精神面のコントロールも難しかったのかもしれない。
初戦から5人を入れ替えるも吉田麻也、遠藤航、鎌田大地というセンターラインの軸は維持した森保一監督だったが、それでもチームの歯車はコスタリカ戦ではどこか上手くかみ合わなかった印象だ。
それにしても、2連勝してグループ突破に大手をかけられるチャンスだったけに、率直にもったいないとしか言いようがない。
後半途中から出場し、好機を作った三笘薫はこう疑問を呈した。
「ドイツ戦のような戦いというか、0-0で良い、後半勝負というところがチームとしてありましたが、やっぱり前半の戦い方、試合の入りもそうですし、シンプルに気持ちのところで上回ることができていたのか、そう感じました」
そして三笘は最終戦のスペイン戦に向けてこうも続ける。
「後悔しない戦いをしないといけないと思います。ドイツ戦のような戦いになる可能性がありますが、今日のような試合をして終わって全員が後悔を残すようなゲームにならないように、しっかり準備して自分たちの全部を出したいです」
アドバンテージを生かせなかったコスタリカ戦。もし第3戦のスペイン戦も苦しい結果となれば、後悔しか残らないはず。そうならないためにも、ここから3日間の準備がなにより大切になる。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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