消極的な相手に対し攻めきれず、後半に自陣でボールを奪われ失点

 カタール・ワールドカップ(W杯)グループE第1節のドイツ代表戦に2-1で勝利した日本代表は、11月27日に第2節のコスタリカ代表戦に臨んだ。ドイツ戦では、それまで見られなかった積極的かつ攻撃的な選手交代がハマり、大金星を挙げることに成功。しかし、コスタリカ戦では、この偉業が帳消しになるような内容に乏しく、結果も最悪なゲームをしてしまった。

 チームとしてのコスタリカ戦の持って行き方に、問題があったと感じる。

 例えばキックオフ前、スタジアムの構造上、日本はウォーミングアップから日差しが照り付けるなかで、試合に向けた準備を進めていた。しかし、コスタリカのピッチは日陰があり、彼らはストレッチの時など涼しい日陰で準備ができた。ウォーミングアップの時間は、約30分間ある。アップとはいえ、真夏に外で30分間、日に当たって運動をするのと、日陰があるなかで運動をするのでは疲労感に違いが出てくる。

 とはいえ、これに関しては割り当てられたピッチが、こちら側だったのだから仕方がない部分がある。問題はキックオフ直前、コイントスで日本は陣地を選べる状況になったにもかかわらず、日陰を選ばなかったのだ。吉田がサイドを変更しないと主審に告げた時、記者席では「えっ?」という驚きの声が数か所から聞こえた。

 これに関しては試合後、GK権田修一(清水)が「試合前から『日差しがある』という話をしていた。一昨日もここで同じ時間に行われていたイランとウェールズの試合を見て、日の入り方が後半にある感じだったので、前半は少し暑いけど、後半に相手が放り込んでくる時に日差しのストレスが無いようにそちらを取ろうと皆で話していた」と、計画通りだったと話している。だが、実際には前半日本の陣内は日に当たり続けたが、後半にエンドが変わると、ピッチの半分以上が陰で覆われた。

 13時キックオフになったことで、暑さについて問われたMF遠藤航(シュツットガルト)は、「そんなに気にならなかった」と言っていたが、MF堂安律(フライブルク)は、「暑かったですけど、それは相手も同じなので」と語った。選手によって体感は違うだろうが、実際のところコスタリカはアップ時間と前半を合わせたら1時間、もしくはそれ以上、日本よりも暑さを感じにくい状況にいたことは事実だ。

 また、前日練習の時には、どの選手も初戦のスペイン代表戦を0-7で落としたコスタリカ代表が、勝利を目指して点を取りに来るため、カウンターで仕掛ければチャンスになるという話をしていた。報道陣から「もともと堅守のチームなだけに、守備を固められたら?」という質問が出ても、「最終予選でも経験しているので」と、これまでの財産で攻略ができると自信を見せていた。

 だが、蓋を開けてみれば、コスタリカはドイツに勝った強い日本を極度にリスペクトしたような、とにかく失点だけはしないという戦いぶりだった。スペースがある状況であれば、今大会初出場となった攻撃的な選手たちも、やりやすさがあったかもしれないが、スペースを消されたことで、より連携が求められる状況になった時に、目立ったのは勢いを生かせる状況ではなく、連係や経験の不足だった。

「勝ったチームはいじるな」という格言から逸脱したターンオーバーの採用も、この結果が出た今となっては悔やまれる。森保監督はふくらはぎの違和感を抱えるDF酒井宏樹(浦和)を含め、計5人の先発入れ替えを行った。

 U-24の選手たち中心に、18人で臨んだ中2日で連戦となった東京五輪でのメダル逸の記憶が強かったのだろうか。森保監督は、26人のフル代表を招集した中3日のW杯では、ターンオーバーを行った。「もともと代えることは想定していた。勝ち進むためにターンオーバーが必要だとは監督が大会前から言っていた」と、DF吉田麻也(シャルケ)は言い、「同じコンセプトを理解することも共有していたので、難しさは感じなかった。ただ、酒井宏樹がケガで、守田はケガから帰ってきたというだけ。FWは変更があったけど。上に行くためには全員が戦って結果を出していかないといけない」と正当性を主張したが、外から難しさを感じていないように見えた人は少なかっただろう。最も相手がべた引きしていたため、酒井を除く初戦のメンバーが起用されていても変わりはなかったのかもしれないが、最終予選で引いた相手に対して結果を残した選手は先発から減っている。

ターンオーバーについて森保監督「まったく後悔していません」

 森保監督は選手たちに臨機応変さや対応力を求めてきたが、ドイツとの初戦に勝利という結果を出した後、自らは臨機応変さや対応力を出せずに、事前に組んだプランを遂行することに、こだわってしまったのではないか。

 それでも、コスタリカ戦後の公式会見で、森保監督はターンオーバー制について「まったく後悔していません」と、言い切った。

「こういう結果になったから、やったことがダメだと第三者の方々は見られるかもしれません。ドイツとの戦い、今日のコスタリカとの戦い、そしてもう一度スペインと激しく厳しいインテンシティの高い戦いをするなかで、我々が勝つために、勝つ確率を上げるために選択をしたこと。結果的にダメだったということですが、トライしたことについては、私自身は日本が勝つために必要だったことだと思ってやりました。実際に機能したかどうかは、皆さんに評価していただけたらと思います」

 3試合を見越してターンオーバーを行ったのだから、これが成功したと言えるかどうかは、スペイン戦後の結果次第になる。とはいえ、試合終盤にMF伊東純也(スタッド・ランス)がかなり激しいファウルを受け、ビハインドの残り少ない時間で倒れ込むようなダメージも負い、休ませたかった選手を休ませることができたとは言い難い。

 また、前回大会で突破できなかったベスト16の壁を突破するためにも、一度は休ませておきたかったであろう吉田、遠藤、鎌田といった軸の選手たちも、1次ラウンド第3戦で休ませることは難しくなった。スペインとドイツが引き分けたことで、スペインを相手に引き分けても、1次ラウンドを突破できる可能性は、かなり薄い。今日のコスタリカを相手に、ドイツが複数ゴールを挙げることが困難だとは、とても思えないからだ。

 歴史的な勝利を挙げたチームと、同一チームとは思えないパフォーマンスで、コスタリカに黒星を付けられた日本。初戦の勝利の勢いを、完全に消してしまうような痛恨の敗戦の後、再び上昇気流を描き、初のベスト8進出への軌道を修正できるだろうか。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)