【識者コラム】あまりにも消極的だった前半の入り…コスタリカ戦の戦いを検証
カタール・ワールドカップのグループリーグ第2戦で、日本代表はコスタリカ代表に0-1で敗れた。失点は後半36分、中途半端なクリアからDFケイセル・フレールにシュートを許した形だった。局面を切り取るなら前からのプレスの甘さ、ロングボールの対応でクリアせずにつなごうとした判断、そこで生じたミス、相手ボールになったあとの対応など、さまざま浮かび上がる。
コスタリカの隙を逃さないプレーを前提として、複数の悪い要素が絡んでしまった失点だった。しかし、この試合は早い時間にゴールを奪えば大勢が決する試合だったことを考えると、前半の入りがあまりにも消極的だった。結果的にあのまま0-0、あるいは終盤に1つ仕留めて1-0に終わっていたら指摘しにくいが、改めてそれを現地で強く感じた。
コスタリカがどう入ってくるか。スペイン代表に7-0で大敗したあとでさらに難しくなったのは間違いない。ただ、前からガンガンくるというより、やはり守備で日本をコンパクトに引き込んで、カウンターで来る戦い方自体は変えてこないという見立てはできた。実際どうなるかは試合が始まってから出ないと分からないが、慎重な入りが難しいゲームをより決定付けてしまったのではないか。
「彼らは予選を見ても本当に最後の部分で戦ってきたり、身体を当てて、みんなで守って。大量得点をしているイメージはないですけど、セットプレーだったり、カウンターだったりで点を入れて、しっかりみんなで守り切るイメージがある」
試合前に鎌田大地がコスタリカをそう評価していたが、まさしくそのとおりだった。「引いた相手をいかに崩すか」という言葉を使うと安易かもしれない。コスタリカは5バックだったが、ボールサイドにはしっかり人をかけながら、縦のレーンをしっかりと埋めていた。そのなかで日本は4-2-3-1の時間帯、ほとんど相馬勇紀のところが起点になっており、攻撃がかなり左に偏っていた。
さらにコスタリカのボールになった時の守備もバックラインのパス回しに対してほとんどプレッシャーがかからず、1トップの上田綺世が外されるとボールホルダーに前を向かれてしまう状況が続いた。そこからシンプルに左のジョエル・キャンベルとブライアン・オビエドのところから果敢に仕掛けられて、堂安律と山根視来の守備がかなり苦しいところで、センターバックの板倉滉がかなりワイドをカバーしないといけない状況が起きていた。
右側の守備が難しくなっていたが、反対側はゴールを決めたフレールが右サイドバックで、オビエドより基本の位置は低かった。しかし、彼はコスタリカでも一番の俊足で、そこから一気に走り込むオーバーラップで守護神の権田修一がカバーリングで何とか対応するシーンがあった。
チームとしてうしろ向きだったことが日本のプランへマイナスに影響
選手個人に目を向ければそれぞれ問題点はあるが、前半にチームとしてうしろ向きだったことが、勝ちに行きながらクロージングしていくというプランにもマイナスに影響してしまったのではないか。前半35分に森保一監督は3バック(守備をセットするときは5バック)に変更を指示した。一時的に長友佑都が左センターバックになるリスクを背負いながらも、右の山根を上げてワイドを高くしながら、堂安をインサイドで絡ませたいという意図は見られた。
さらに言えば守備で板倉がキャンベルを見られるので、そこの対応が安定したところはある。それでも5-4-1のブロックを崩すための攻撃面での大きな成果は見られなかった。後半頭には伊藤洋輝を左センターバックに入れて、FWに浅野拓磨を投入。ただし、ここで日本は攻撃時に伊藤を左サイドバックのような位置にして、相馬をウイングとして高い位置の仕掛けに参加させる可変のビルドアップを発動した。
分かりやすく言えば“3.5バック”という表現になるかもしれないが、ボランチの守田英正が中央突破からGKケイラー・ナバスを脅かすなど、立て続けにチャンスを作った。これにもコスタリカは早めに対応し、ヘルソン・トーレスがしっかり伊藤をチェックしながら、フレールが相馬をマークしたことで、効果を出しにくくなった。
あとになって振り返れば、後半の立ち上がりがコスタリカの守備を最も困らせ、得点の可能性があった。三笘薫を入れてからは通常の3バックに立ち位置を戻して、左に三笘、右に相馬が張る形になった。ただ、結果論にはなるが、立ち上がりの4バック気味のままで三笘に勝負させる形にしたほうが、剥がすべき相手がはっきりする分、効果的だったのではないかと考える。
ちょうど前日にメキシコ代表とアルゼンチン代表の試合があり、極論、引き分けでもOKのメキシコとあとがないアルゼンチンで、やはりメキシコは終盤の勢いに押し切られたところがあった。コスタリカはアルゼンチンとスタイルこそ違うが、やはり勝ち点3を取らないといけない状況で、終盤になってくると最悪ドローでもOKの日本との差と言うのは出やすい。
そこで狙いどおりクローズしてしまえれば問題ないが、こういう大舞台で試合をうまくクローズすることほど、実は難しいものはないだろう。やはり前半から積極的に入るということができなかったのは試合に大きく響いたのは確かだ。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)