●相性の悪さ。合わせただけのシステム変更

サッカー日本代表は現地時間27日、FIFAワールドカップカタール・グループE第2節でコスタリカ代表と対戦し、0-1で敗れている。5バックで守る相手に攻撃のアイデアも乏しく、試合の大半は膠着状態となった。なぜこのようになってしまったのか。日本代表のプランを検証する。(文:西部謙司)
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 コスタリカ代表は、日本代表にとってドイツ代表、スペイン代表より相性が良くない。日本代表は引いて守備ブロックを作られると得点するのが苦手だからだ。得点するとしたら、ハイプレスで相手のミスを誘うか、三笘薫と伊東純也のドリブル突破ぐらいしか思い浮かばない。ただ、それはワールドカップが始まるまでのことで、もしかしたら何かを用意しているのかもしれないと淡い期待もしたのだが結局何もないままだった。これで点をとるのは難しい。

 コスタリカ代表は5バックで引いていた。もう少し攻めてくるかと思ったので意外だったが、これで焦点は日本代表が得点できるかどうかに絞られた。押し込んだ後のハイプレスは有効、コスタリカ代表はすぐに手詰まりになっていた。これでチャンスを作れる可能性はあった。しかし、その他は前半に関してはノープランといっていいのではないか。

 相馬勇紀、堂安律のドリブル突破以外に攻め手が見当たらず、頼みの鎌田大地は明らかに本調子には見えない。攻め込んで5レーンを埋めるでもなく、チームとしての動き方は曖昧なまま。プランがないのでボールは持てても相手の守備に穴が開いているわけではなく、アイデアも出てこない様子。

 前半途中で4-2-3-1から3-4-2-1に変えてみたが、マッチアップを合わせただけなので、個で圧倒する以外の優位性は期待できそうもなかった。どちらも決定機はゼロ、シュートすらほとんどないまま前半を0-0で折り返した。

●切り札を生かし切れないサッカー日本代表の拙攻

 後半から日本代表は2人を交代する。ウイングバックに適性がない長友佑都に代えて伊藤洋輝、上田綺世に代えて浅野拓磨。相手が引けば裏のスペースはあまり使えない。そうなると攻め手はサイドからのクロスボールしかないのが現状である以上、中央に高さと強さのあるFW(上田)が必要になる。後半から浅野を投入したのは、さすがにコスタリカ代表も前に出てくるという読みだろう。

 ところが、コスタリカ代表は全く前へ出てくる気配がない。日本代表の攻撃が続き、立ち上がりに守田英正と浅野のパス交換から守田がシュート。さらに浅野が左サイドを駆け上がってのクロスからのこぼれ球を遠藤航がシュートとゴールへ迫る。

 守田と浅野のパスワークからのフィニッシュは、この試合であった2回の中央突破の1つだった。浅野にパスをつけた守田は自らのパスを追うようにサポート、これで瞬間的に2対1を作れる。この場面では浅野と入れ替わる形になった守田がシュートしたが、相手が圧縮してくれば周囲は空く。

 やろうと思えばこうしたパスワークもできるのにそのアイデアをあまり共有できているようには見えず、中央突破に恐さを見せられなかったのはメインのサイド攻撃にも影響があったかもしれない。

 切り札・三笘の登場は62分。しかし、三笘に勝負させる状況をなかなか作れない。中央に恐さがないのでマンマークで対応されていてDFと三笘との距離が近かった。三笘ぐらいしか崩すアイデアがないのに、そこまでの導線を確保できていないのも残念だった。

 67分に伊東を投入して勝負に出る。スペイン代表相手に勝ち点をとるよりも、コスタリカ代表に勝利するほうが現実的なので、リスクを負っても攻撃にリソースを割くのは理にかなっている。しかし、これで勝てなかっただけでなく敗れてしまったのだから結果的に賭けに負けた形になってしまった。

●想定内の膠着状態が持つ落とし穴

 日本代表の守備はほとんど崩されていない。失点はミスが重なったことで起きた自滅である。

 ドイツ代表戦ではほぼなかった自陣でのパスミスが散見された。直接的には吉田麻也がフワリとしたパスを中央の守田に送ったのがズレて、ボールを奪われたのが原因だ。ただ、その10分ほど前にも吉田は自陣でパスミスをしていた。また、失点の直前にはジョエル・キャンベルが余裕のある技巧を披露するなど、コスタリカ代表が少しリズムをつかんでいて、逆に日本代表には危険な時間になっていた。守備を固めてこの瞬間だけを待っていたとすれば、コスタリカ代表は相当に辛抱強い。

 先制された後、ようやく三笘の個人技から2つの決定機があり、この試合2回目の中央突破もあったがどちらもゴールならず。

 森保一監督のチームは僅差勝負を容認している。とくにワールドカップとなれば大半の試合は僅差であり、膠着させれば格上にも勝ち目がある。この試合の前半も膠着を想定内とするいわゆる「塩試合」だった。ただ、この戦い方は優勢な試合を落とすことも起こりうる。引かれた場合に崩せないという弱点は変わらず、さほどハイプレスをしてこない相手にミスがらみの失点で敗れてしまったのは不運ではない。

 次のスペイン代表はハイプレスがほとんど通用しない相手だ。ドイツ代表戦と戦い方はほぼ同じになるが、その点が違う。ミドルゾーンで奪ってのカウンターを狙いたいが、もっと押し込まれる時間帯が続くと想定される。そのときに前線で収められるFWがいれば押し返すこともできるが、そうしたFWを日本代表は持っていない。

 そうなると、ディフェンスラインの裏を開けてプレスの密度を上げる、あるいはマンツーマンで決闘を挑むなど、大敗の危険はあってもどこかでリスクを負った戦い方が必要になるかもしれない。ただ、基本的にはドイツ代表戦と同じなのでやりにくさはないはず。コスタリカ代表戦よりも日本代表の良さが発揮される試合を期待したい。

(文:西部謙司)

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