サッカー日本代表は現地時間12月1日、FIFAワールドカップカタール・グループE第3節でスペイン代表と対戦する。世界最高峰の選手が集結するスペイン代表において、左サイドからの攻撃は特長の一つ。対面することになる右サイドの伊東純也は彼らをどう封じ、攻撃に転じていくのか、イメージを膨らませている。(取材・文:元川悦子【カタール】)
●スペイン代表に挑む日本代表
27日のコスタリカ代表戦で手痛い黒星を喫し、カタールワールドカップ(W杯)グループリーグ突破に黄信号が灯った日本代表。12月1日のスペイン代表戦に勝てれば16強入りが決まるが、ドイツ代表に対して60%以上ボールを支配した強国相手に日本代表がジャイアントキリングを起こすのは容易ではない。
「うまくてテクニカルなチームだとは思っていましたが、その前に激しく厳しく本当にその中で技術を発揮できる。お互いが連係連動できる世界最高のチーム」と森保一監督も改めて最大級の賛辞を送っていたほどだ。
とりわけ、スペイン攻撃陣最大のストロングポイントはジョルディ・アルバとダニ・オルモがいる左サイド。ドイツ代表戦でも彼らが再三再四、左サイドを突破して決定機を作っていた。後半20分のアルバロ・モラタの先制弾もダニ・オルモが中に絞り、ジョルディ・アルバが攻め上がって折り返したところにモラタが飛び込んで右足ボレーで合わせる形だった。
その攻めをいかに封じ、逆に背後を突いてチャンスを作るのか。ゴールに結びつけていくのか。それは日本代表にとって非常に大きなポイントと言っていいだろう。
「(対策は)明確にあるんですけど。戦術面のことはあまり言いたくないです。今はメディアを通して世界レベルでそういうことが伝わりますし、向こうに情報を与えたくないというのは正直ある。でも僕の中ではしっかりと対策は持っています」
右サイドバック(SB)で出場可能性のある長友佑都は自信満々でコメントしたが、守勢に回る時間が増えるのはやむを得ないだろう。
そうなると、右サイドでの仕掛けを得意とする伊東純也の守備負担も増えそうだ。
●伊東純也が警戒するのは…
23日の初戦・ドイツ代表戦でも彼は自陣に引いてダヴィド・ラウムの攻め上がり阻止に奔走していた。時にはペナルティエリア内に入って「もう1枚の右SB」のように体を張るシーンも見受けられ、縦への推進力や精度の高いクロスといった特長を出し切れずに苦しんだ。
スペイン代表戦でも同様の状況が長く続くことが想定される。本人もそれなりの覚悟を持って大一番に挑む構えだ。
「左サイドは相手のストロングポイントだと思います。特にジョルディ・アルバはうまいし運動量がある。オーバーラップのタイミングもうまいですし、クロスの質も低くて速いボールが出てくるイメージがありますね。
どういう形で行くか分かんないですけど、自分がつかなきゃいけないところはハッキリマークして、受け渡せるところは受け渡しでやりたい。SBや近くのボランチとかとうまく連係できないと厳しいなと思います」
日頃、感覚派で、あまり対戦相手を徹底分析するタイプではない伊東も、さすがにマッチアップが予想されるスペイン代表SBの一挙手一投足には目を奪われた様子。彼を自由に攻め上がらせてしまったら、日本代表はいつ失点してもおかしくない。
ドイツ代表はスペイン代表に1点を取られても同点に追いついたが、同じ展開は避けたいところ。まずは相手の失点をゼロに抑え、焦れてくるのも待つような展開に持ち込みたい。
ドイツ代表戦の反省を踏まえてこうも話している。
●攻撃に関する2つのキーワード
「ドイツ戦の前半は引きすぎた。どんなにうまい選手でもある程度プレッシャーをかけられたら嫌でしょうし、自由にやらせないってことが大事になると思います」
アグレッシブな守備をチームとして仕掛けていくことが必要だ。
そのうえで、アンカー脇のスペースを有効活用したり、ハイラインの裏に飛び込んだりして、相手の守備組織を崩し、ギャップを突いていくようなしたたかな攻撃が必要だ。ジョルディ・アルバの背後というのは特に狙い目。そこを突いていく「イナズマ純也」の推進力はまさに日本代表の生命線になる。本人もそういった自覚を持っている様子だ。
「格上のチームに勝つには、まず守備をしっかりするのはもちろんですけど、そこから質の高いカウンターや奪ったボールをつなぐところが大事になってくると思います。
ドイツ戦を振り返ると、奪ったボールをミスしたりしたケースがかなりあった。そこで1本つなげて広いスペースに行ければチャンスになっていた。スペイン戦ではボールをより大事にしながら素早く攻められたらと思います」
このように彼は「奪ったボールを大事にする」「素早い攻撃」という2つの攻撃に関するキーワードを掲げたが、それを徹底してこそ、勝機が見えてくる。
●そういった賢い試合運びができるか
日本代表には伊東、三笘薫といった打開力あるウイングがいるし、最前線の前田大然、浅野拓磨も矢のような推進力を誇る。彼らがグイグイと縦に攻め込んできたら、百戦錬磨のスペイン守備陣と言えども、対応に苦慮するだろう。
名手のウナイ・シモンも難敵ではあるが、日本代表はマヌエル・ノイアーから2ゴールを奪ったという事実もある。数少ないチャンスをモノにできれば、必ず道は開けてくるはずだ。
「強いというのは分かっている。でも、こっちも勝たないといけない。強いメンタルを持って挑むのはもちろんですけど、チームとしてうまく戦えないと勝てないと思います」
そういった賢い試合運びができるか否か…。コスタリカ代表戦では失敗したものの、スペイン代表戦はドイツ代表戦同様に100%チャレンジャーとしてガムシャラに挑んでいける。そのマインドこそ奇跡を起こす原動力となる。
最終予選で4ゴール・2アシスト・PK奪取と全12ゴールの半分以上に絡んだ背番号14はまさに挑戦者そのものだった。その時と同じようにアグレッシブにぶつかっていくしか、日本代表が勝ち進む道はない。
伊東には急先鋒として前へ前へという姿勢を全身で表現し、スペイン代表撃破のゴールをこじ開けてほしいものである。
(取材・文:元川悦子【カタール】)
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