「ねえねえ、カメラマンさん」
11月28日の代表練習の撮影中に、両肩に優しく手を置かれながら、そう呼びかけられた。
うん? どこかで聞いたことのある声だ。最近よく聞く。誰だ?
ファインダーから目を離して振り返る。そこに立っていたのは、解説などの仕事でカタール入りしている元日本代表DFだった。間近で見ても、男前だな。
練習場はピッチが2面。手前と奥。その奥のピッチでコーチと別メニュー調整を続ける選手がいる。
奥のピッチに誰がいるか。肉眼で確認するのは無理な距離。内田篤人さんは、「アレ、誰か分かります? 見えます?」と聞いてきた。
すぐに写真を撮って、カメラ上で拡大して、「冨安選手です」と見せる。内田さんは「うわ、すげえ~」と驚き、「ありがとうね」と感謝を述べ、ふらっと立ち去っていった。
内田さんとは初対面。だけど、フランクに話しかけられて、こちらも自然に応じることができた。不思議な雰囲気を醸し出す人。現役時代のクレバーかつ魂のこもったプレーと同様に、この人柄が多くのファン・サポーターに愛される理由か。
内田さんが視線を向けていた冨安選手はその日、ゆっくりと歩いてから、ジョギング。投げてもらったボールをトラップしてリターンする基礎練習、少し離れてロングボールを蹴る、といったメニューを消化していた。
グループステージ最後のスペイン戦は、現地時間12日1日の22時にキックオフ。24歳DFは、決勝トーナメント進出がかかる大一番に向けて、静かに、着々と準備を進めている。
取材・文・写真●金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)
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