現地時間11月29日、カタール・ワールドカップ(W杯)のグループB第3戦が行なわれ、前節イングランドとスコアレスで引き分けたアメリカと、ウェールズに2-0で勝利したイランが対戦した。

 アメリカが勝点2で、イランが勝点3。お互いに決勝トーナメント進出をかけた一戦は、クリスティアン・プリシックの1点を守り切った前者に軍配。同組のイングランド対ウェールズ(3-0)の結果を受け、グループBはイングランドとアメリカがグループステージを突破した。

 決勝トーナメント進出をかけた一戦であることはもちろん、このカードは国際的にも様々な背景を抱えていることから、英メディアの一部は「代理戦争だ」などと煽るなど、不穏な空気も漂った。

 しかし、ふたを開けてみればそんなことはなかったようだ。中東メディア『Al Jazeera』は「国歌斉唱には様々な憶測が流れた。イランは国内の運動に連帯し、イングランド戦では国歌を歌わず、2戦目のウェールズ戦では歌うことを強要されたという報道もある。しかし、この日は彼らはお互いにスタンディングを保ち、相手の国歌にリスペクトを表わした」と報じている。
【W杯PHOTO】カタールに集結する各国サポーター!
 また、熱戦を終えた後、同メディアは両国サポーターの様子も伝える。あるイランファンは「イングランド戦の負けはひどく、ウェールズ戦では自分たちの良さを発揮できた。でも、今日は攻撃でも守備でもミスが多かった」と述べ、「彼ら(アメリカ)は勝利に値した」と称えたという。

 一方のアメリカのファンは、「初のラウンド・オブ16に進出したことは素晴らしい。サッカーはアメリカでそれほど人気のあるスポーツではないが、海外での盛り上がりに影響されているはず」と語ったようだ。

 そして、両国サポーターが試合後、スタジアムで出会うとお互いを称え合う姿も見られたという。

「イランのファンとアメリカのファンは、お互いを称え合い、祝福していた。ペインティングした頬を寄せ合ってセルフィ―を撮り、肩を組んでムービーを撮影して大声で騒いでいた。決して彼らの間に反感のようなものは漂っていなかった」

 1998年のフランス大会で対戦して以来だったアメリカ対イランのカード。フィールドの上でアスリートとしてフェアプレーを貫いた両チームとそのファンに、同メディアは拍手を送っている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部