カタール・ワールドカップでベスト8以上を目ざす日本代表。グループステージの初戦はドイツに2-1で逆転勝ち。望外の好スタートを切ったが、続くコスタリカ戦は0-1で敗戦。攻め込みながらも、最後まで1点が遠かった。

 2戦を終えて1勝1敗、勝点3でグループ2位。2大会連続の決勝トーナメント進出をかけて、森保ジャパンは強敵スペインとの最終戦に臨む。国内外のサッカー事情に精通し、今大会も現地で取材する河治良幸氏に、スペイン攻略の三大ポイントを挙げてもらった。

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 ドイツに2-1で逆転勝利して、コスタリカに0-1の敗戦。ただ、前向きに考えれば勝点3で、スペインに勝てば自力でノックアウトステージに進める。勝点1でも、ドイツとコスタリカの結果次第で突破の可能性もあるが、それは今、考える必要はないだろう。

 勝点3を取るというのは、どこかで点を取らないといけないということ。西野朗前監督なら、こういう状況でもトップギアで試合に入り、アグレッシブに最初の10分間で点を取りに行くかもしれないが、残り80分以上を耐えるというのは難しい。

 どう戦って勝点3をもぎ取るべきか、3つのキーポイントを挙げる。筆者はもともとスペイン戦に関しては5バックで臨むべきだと言ってきたので、その前提で話を進めるが、5バックでも4バックでも大枠として狙うべき勝負のポイントに違いはない。
 
 1つ目は、プレスのかけ方。スペイン相手にノープレスでドン引きというのは非常に危険だが、ハイプレスに行ったら行ったで、簡単に剥がされて潜り込まれるのは、“ゲーゲンプレス”を標榜するドイツが身を持って実証してくれた。

 高い位置でボールを奪い切るのが現実的ではないが、スペインもボールを回しながら、どこかで仕掛けの起点を作って行こうとする。そこにボール奪取のための網を張りたい。

 基本的に、2人のCBと4-3-3のアンカーには、1トップの選手、さらにサイドハーフの2人がプレッシャーをかける。ルイス・エンリケ監督が率いるスペインは、ボールを回すなかでも配置に忠実で、左右のSBが高い位置に上がる時はウイングが中に絞り、ウイングが外に開けばSBが中にポジションを取る傾向が強い。

 いわゆる“レーン被り”がほとんどないことを利用して、サイドの守備は左右のアウトサイドの選手が受け持てばいい。

 日本は最終ラインのハーフスペースをしっかりと埋めたうえで、事実上の5-2-2-1のような形で、スペインのインサイドハーフにボールが出るところを狙って奪いに行く。

 本当は“デュエル王”こと遠藤航がいたら理想だが、別メニューが続いていてスペイン戦は難しいため、攻撃的なキャラクターながら守備のデュエルが強い鎌田大地を一列下げて、ボールの奪いどころとして頑張ってもらいたい。

 1トップと2人のボランチに負担がかかるが、前田大然がスタメンなら途中で浅野拓磨が、ボランチは守田英正と鎌田大地が疲れてくれば田中碧と柴崎岳、場合によっては板倉滉を前に上げられるので、あまりペース配分を気にすることなく、60分ぐらいで出し切るイメージでも良いだろう。

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 2つ目は、カウンターの狙いを明確にすること。ボールの奪いどころにもよるが、スペインはボールをロストした瞬間に即時奪回しようとしてくる。そこはドイツと変わらないが、上手く繋げた時にスペースを見出しやすい。

 効果的なのはボールサイドと反対側の選手が、守備から攻撃に切り替わる瞬間にフリーでボールを受けられるようにしておくことだ。それによりファーストパスを選択するタイムラグがほとんどないので、たとえばミドルレンジのワイドパスを受けて、スムーズにボールを前に運べる。

 そうした状況から縦にボールを運ぶ役として、右に伊東純也、左に三笘薫を置くのが最も有効だが、後半の勝負所でパワーを使う意味でも、スタートは左に久保建英か相馬勇紀を起用して、攻守両面で頑張ってもらう形か。

 ただ、スペインが相手だとボランチの体力的な消耗は大きくなるので、選手交代が戦術だけでなく、疲労を考えたものにならざるを得ないかもしれない。どこかで三笘を投入するのは前提として、5枚の交代カードの使い方を周到に見極めておく必要がある。
 
 3つ目は、90分の中で短いながらボールを持てる時間の使い方だ。スペインがどれだけポゼッションとハイプレスを掲げていても、90分、ハーフコートゲームにはならないだろう。ラ・リーガでも、たとえばビジャレアルなどはバルセロナと対戦する場合、カウンターからの得点も狙うが、90分の中で20分か30分、ボールを握れる“フィーバータイム”の使い方が上手い。

 バルセロナの例に漏れず、スペインも握られる側になった時間の守備は、堅守速攻を掲げるチームほど上手くないというか、自陣でもボールを奪う守備に来たり、バラツキが生じやすいのだ。

 こうした状況で、鎌田や久保を起点に厚みのある攻撃を繰り出して行く。リスク管理は必要だが、スペインはドイツほど、自陣からのロングカウンターを狙ってこないので、必要以上に後ろに人数を確保する必要はない。

 SBの攻め上がりも可能になるが、大外で受けてシンプルにクロスを上げるより、相手SBの内側を突いて、ショートクロスやマイナスクロスを合わせるような形からフィニッシュに持ち込めるはず。スペイン相手に、そうした攻撃を繰り出すにはイメージの共有はもちろん、決断力が問われてくる。

取材・文●河治良幸