森保ジャパンが立ち上がった2018年夏から目標に掲げてきたのがカタール・ワールドカップでの日本初となるベスト8進出だ。

 その悲願成就へ12月5日、ラウンド16のクロアチア戦へと臨む。

 ドイツ、コスタリカ、スペインと同組になったグループリーグを2勝1敗のトップで通過した日本。特にワールドカップ優勝経験国のドイツ、スペインを下した戦いぶりは大きな反響を呼んでいる。

 2度の大金星を挙げた背景には、前半に耐え、後半に勝負に出る今大会の“勝利の方程式”を作れたことにある。特にスペイン戦での支配率17.7パーセントは、ワールドカップで勝利を挙げた国で史上最も低い数字だったという。

 もっとも、厳しいグループを勝ち抜くために、ベスト8へ進出すために、日本はこの戦い方を選び、選手たちも高い個人戦術眼を持ちながらピッチで実行してきた。

 クロアチアはドイツやスペインとは異なり、守備にも特長があり、日本がボールを持てる時間も増えるかもしれない。ただし、今の日本の戦い方は不変だろう。

 田中碧も大一番へ向けて「ブレないことが大事だと思います。相手が変わったからといって、今までやってきたことを変えるのはリスクがあるでしょうし、そういう意味では、どの試合も前半は0-0でいきたい。もちろん点を取れればそれに越したことはないですが、0-0を目指すのは自分たちの戦い方であるので、まずはそこをブレずにやっていきたいです」と話す。
 
 ただし、選手たちも今後、ずっとこの戦い方で良いと考えているわけではない。

 田中が「守ろうと思えば守れるのがこのチームの良さ。でも戦い方を選べない悔しさもありますし、特に前にはもっと保持して存在感を出す選手が多いので、もどかしさはあるはずです。ただ、結果がすべてである以上、多少、捨てなくてはいけない部分もある。現時点ではすごく上手くいっていると思います」と口にすれば、冨安健洋もこう語る。

「日本サッカーの今後を考えれば、いつまでも(相手に)アジャストするサッカーをやっているわけではなく、クオリティを示せる選手が育っています。クラブではヨーロッパ式のサッカーをやっている選手も多いですし、主導権を握るサッカーにもチャレンジしなくてはいけないと思います。でもそれは今大会ではないということは言っておきたいです」

 選手たちもカタールでの快進撃に自信を漲らせている。何より今のチームには、自らの立ち位置を的確に認識し、勝つために何が必要かを体現できる選手たちが集まっている。

 田中はスペイン戦後にこうも話していた。

「勝てた自信がある。こういう積み重ねがあってこそ強豪国になっていく。最初から強い国はいない。こういう歴史、経験を積み重ねて世界から見て強豪国になっていくと思います」

 日本が階段を登っていくためには、ベスト8進出という大きな成果は必須だ。今の戦い方を貫き、未踏の地に足を踏み入れたその時に見える新たな景色があるのだろう。

 そのためにも、まずはクロアチア戦。粘り強く勝利を掴んでくれることを信じたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト特派)

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