日本代表のカタールワールドカップが終了した。現地時間5日、ラウンド16でクロアチア代表と90分間で決着がつかない熱戦の末、PK戦で敗退したのだ。目標としたベスト8以上には到達できなかったが、成果は大きかった。見えてきた足りないもの、今後に活かせる材料を、ベテランサッカージャーナリストの大住良之と後藤健生が徹底的に語り尽くした。

■試合の重みの違い

――延長戦とPK戦の有無の他にも、グループステージと決勝トーナメントの試合で大きな違いはどこにありますか。

大住「それはもう、全然違うよ。決勝トーナメントだったら、ドイツ戦やスペイン戦みたいな戦いは生まれなかったと思う。グループステージだから油断が生じたけど、決勝トーナメントではあり得ない。だから世界のエリートグループしか残らないし、ここで壁をひとつ破るというのは重要なことだし、大変なことなんだよ」

後藤「僕は延長の有無はあるけど、基本的にはそう大きな違いはないと思う。もちろん、決勝トーナメントには強いチームしか残らないし、強い相手が本気になってかかってくる。あるいはコンディションを上げてくるから、グループステージより大変になるけどね」

大住「僕はちょっと違う意見だな。グループでは点を取ったらトーンダウンするところがあるけど、決勝トーナメントだとそういうことはないと思うんだけど」

――確かに番狂わせはグループステージでは多く起こりますが…。

後藤「昔からそうではあるんだけど、決勝トーナメントでもブルガリアがドイツに勝ったことがあるし、2002年大会なんてトルコと韓国がベスト4に入ったんだから。決勝進出は大変だけど、準決勝までなら可能性は低いけどもしかしたら勝ち進める」

■あと30年でW杯優勝を目指すために

――日本サッカー界がやるべきことは多いですね。

後藤「今回はゲーム戦術がうまくはまってドイツとスペインに勝ったけど、やはり力と技術に大きな差があったことは間違いないわけだよね。本当に常にべスト8まで残って、その上まで行こうと思ったら、ゲーム戦術じゃなく時には圧倒してドイツに勝てるくらいの力にならないと。日本サッカー協会は2050年までにワールドカップで優勝を目指すと言っているけど、今回のような勝ち方をしている間は無理だよね」

大住「真っ向勝負をして、お互いに目の色を変えてチャンスをつくり合う試合で勝てるようになったかというと、まだ全然なっていないから。前半死んだふりして後半に点を取って、という勝ち方だった」

後藤「それができたのは、すごく見事なことだったけどね。昔はそういう状況でも手も足も出なかった。そういうことができるようになっただけでも、すごいことなんだけどさ」

大住「ただ結果だけ見て、ドイツとスペインに勝ったから良い、というものじゃないんだよね」

後藤「最初に大住さんが言ったけど、コスタリカ戦に勝っていれば、スペインとの第3戦で選手を休ませて、ラウンド16でクロアチアに勝てていたかもしれないんだよね。その点だけは、僕は絶対に強く指摘しておきたい。そこだけは森保一監督に考え直してほしいな、と思うんだ」

大住「あれは計算違いだったと、僕は思うんだよね。あのメンバーで勝てると思っていたんだよ」

■森保監督の成長

――今回の日本代表に点数をつけるとしたら、百点満点で何点ですか。

後藤「今の状況でできたことを考えると、100点に近いんじゃないの。あれだけドイツとスペインと実力差があって、ケガ人だらけだったのに、あのグループを首位通過したなんて、これ以上のことは望めないんじゃないですか」

大住「試験勉強を全然しなかったけど、うまくヤマが当たって点を取ったという感じはあるけど、連れてきた26人でできることはやり切ったと思うよね。やはり今大会は、森保監督の成長が一番大きく影響したんじゃないかな」

後藤「去年の東京オリンピックで、僕は3戦目でメンバーを変えなきゃと訴えていたんだけど、結局あまりメンバーを変えずにフランス戦を戦ったことで、最後は疲労がたまってメダルを取れなかった。その反省から、どんどん選手を変えられるチームをつくる準備をしていたからこそ、ケガ人が出てもチーム力を落とさずに戦えたわけでしょ。本当に森保監督として、大成長した気がする」

大住「だからね、僕としてはあと4年やってくれないかな、と思うんだけど」

後藤「僕もやってほしいけど、クロアチア戦後の記者会見では、あとは選手たちに頑張ってほしいという感じの言い方をしていたからね。これから4年間、切磋琢磨して強くしていきたい、じゃなくて、やってほしいという言い方をしたから、やらないのかなと思った。できれば、今回の経験を糧として、さらにもう4年間やってほしいなという気はする」

大住「本当に大変な仕事で、本人だけじゃなくて家族を含めて、8年間できるのかというのは分からないけどね。でも、まだ若いわけだし、あれ以上の経験と人材は見当たらないから、ぜひやってほしい」

後藤「クラブの監督をやりたいという気持ちもあるかもしれないしね」