12月7日、カタール・ワールドカップ(W杯)を戦い終えた日本代表チームが帰国会見を実施。選手を代表してキャプテンの吉田麻也が、森保一監督、田嶋幸三会長、反町康治技術委員長とともに出席した。

 2日前、日本は決勝トーナメント1回戦で、前回準優勝のクロアチアにPK戦の末に、惜しくも敗戦。またしてもベスト16の壁に阻まれ、森保監督が度々口にしてきた「新しい景色」を見る夢は叶わなかった。しかし、成田空港では勇気と感動を与えたチームを称えようと、多くのサポーターが集まった。

 吉田は「素直に嬉しかった。本当だったら1人1人と握手したいぐらいだけど、こういう世の中なので」と満面の笑み。柔和な表情で喜びを噛みしめた。

「僕は3回目のワールドカップで、ブラジルの時もすごく盛り上がっていたし、ロシアの後ももちろん盛り上がりがあったが、今回はより苦しい時期をみんなで乗り越えてきて、一緒に戦ったという気持ちが強い。自分たちもそこをキーワードにしてやってきたので、こういう一体感はすごく嬉しかった」
 
 カタールで長きに渡り、寝食を共にしてきたチームは、この日をもって解散となった。最後に掛けた言葉は何ともキャプテンらしい、後輩へのエールだった。

「感情的になっててあまり何言ったか覚えてないが、ほとんどの選手が20代で、そんな若くして自分の国を背負って仕事ができるなんて滅多にないことだと思うので、しかも自分の好きなサッカーで……。本当に誇り高き仕事だと思っている。

 なので、みんなにもこんな良い仕事はないよと。これから注目度が高まるので、たくさんメディアに出て、露出を増やして、またこのサッカー人気を加速させようとお願いした。メディアのみなさんも是非、若い選手たちにオファーをどしどしお待ちしています」

【W杯日本代表帰国会見PHOTO】おかえりSAMURAI BLUE!森保監督・吉田麻也キャプテンらが会見を実施!
 未来を切り拓く若手がいる一方で、それを支えるベテランがいる。34歳のキャプテンは、今大会で唯一自身より年上の長友佑都と、川島永嗣の存在価値の高さも声高々に訴えた。

「ともに代表でプレーしてきて、10年以上が経つが、2人とも本当に芯の強い男。彼ら、というか僕も含めて、チームに与える影響はやっぱり少なくない。常に良い影響力を与えたんじゃないかなと。だからこそ監督もそこを理解して、長友選手、川島選手に色んな役割を与えたと思う。

 やっぱり歳が上になればなるほど、『若い選手のほうがいいんじゃないか』『もういいだろう』と言われるが、サッカーはチームスポーツ。そのなかで色んなバランスが必要になる。やっぱり川島選手が練習場にいるとくっと引き締まる。長友選手がボール回しにいるとやっぱり盛り上がる。そういう熱量を彼らは持っていて、僕自身も大きな影響を受けた。

 間違いなく若い選手はそういう姿を見て、一流の選手とは、長く代表でやるには、っていう考え方を身に付けていくんじゃないかと思う。同時に日本代表でプレーする、仕事をする意味だったり、覚悟を学んでいけると思う。僕自身も非常に感謝しているし、若い選手も間違いなく感謝しているので、本当にブラボーな役割だったと思う」
 
 また、終始和やかな雰囲気で進んだ会見では、指揮官と息の合ったやり取りも。吉田は「今大会で最も印象的なシーン」を問われると、「コスタリカ戦のハーフタイムに監督がブチ切れたこと」とニヤリ。横にいた森保監督は何とも言えない表情で「どうリアクションしたらいいのか……。(伝えた内容を話せば)だいぶピーっという音が入りそうなので、今度個別にお伝えします」と不敵な笑みを浮かべた。


 吉田と森保監督はいずれも進退については明言していない。同じカタールで開かれるアジアカップの開催が近づくなか、再び日本サッカー因縁の地で、森保・吉田体制での戦いは見られるだろうか。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)