【専門家の目|家本政明】「ABEMA」で解説した本田の言葉選びや本音トークから日本サッカーについて考察

 森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)でグループリーグを首位通過。迎えた決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦し、1-1の同点で延長戦を終えPK戦の末に1-3と敗れた。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が、「ABEMA」でカタールW杯プロジェクトのGM(ゼネラルマネージャー)を担当し、日本戦の現地解説を務めたMF本田圭佑について語っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 日本はグループリーグでドイツ代表(第1戦/2-1)、スペイン代表(第3戦/2-1)を撃破。強豪相手に見事勝利を収め、決勝トーナメントへ進出を果たした。初のベスト8入りを懸けたクロアチア戦でもオープンな展開から前半に先制したが、後半に追い付かれると1-1で延長戦を終えて120分でも決着がつかず。PK戦で日本は3人が失敗し、トータルスコア1-1(PK:1-3)でベスト16敗退が決まった。

“死の組”と呼ばれたグループEを突破し、クロアチア戦でも見事な戦いぶりで躍進を見せた今大会だが、それに加えて本田の自由かつ的を射た解説も話題を呼んだ。家本氏も「最高に面白かったです」と絶賛している。

「テレビの解説は丁寧にどこかよそ行きの言葉を選びますが、本田さんは自分に生まれた感情を言葉にして出してくれるので、共感することも多かったです。また彼は状況を伝える能力が高く、選手の心理や監督の考えなどの話はその構図が浮かびやすく、これまで以上に彼の魅力に惹かれましたね」

 今までとは「違う形でW杯を楽しませてくれた」と話した家本氏。「普段サッカーを見ないライトな層に対しても、本田さんはこれまでとは違う切り口で人の心を掴んでいたと思います」とW杯を盛り上げるうえで重要な存在だったと語った。

 そうした日本サッカーの盛り上がりを実感した家本氏に、今後の発展のために何が必要かと尋ねると「いろいろな要素があります」としながら主な2つのテーマを挙げた。

 まずは本田で話題を呼んだ解説について、「伝える側の言葉の表現も変わっていく必要がある。海外では解説者、元選手や元監督に加え、元レフェリーも番組などに呼ばれ討論に参加しています」とメディアでの審判の立ち位置に言及。「本田さんは選手時代の糧や監督としての経験がコメントに生きていました。ルール上の専門的なところはレフェリーしか語れないと思います」と持論を展開した。

「レフェリーのことを安易に知識のない人が語ってしまうと、誤解を与えてしまう可能性があります。フットボールの魅力を正しく伝えるためには審判、元審判が表に出ていく必要があるのかなと思います。もちろん、制作サイドがオファーありきの話になりますが…(苦笑)」

Jリーグの“世界仕様化”の必要性を強調

 そして、「Jリーグの成長」も重要な点だと家本氏は説く。「クロアチア戦後に長友(佑都)選手も話していましたが、日本のJリーグがもっと盛り上がったほうがいいです。J1からJ3リーグまで、通年質の高いフットボールが繰り広げられることで、優秀な選手が出てくるはずです」と、より世界仕様にリーグがより変化していくことを求めた。

 さらに「日本で出てきた優秀な選手は、どんどん海外に出ていくべきだと思います。今大会もそうしてステップアップした選手が活躍しています。すべては日本代表にもつながっています。また、次から次へと優秀選手が出てくるようになれば、日本はもっと強くなると考えています」と自らの見解を示していた。

 4度目のW杯で、惜しくもベスト8に届かなかった日本。家本氏の指摘した点のほかにも課題はたくさんあるかもしれないが、4年後のW杯に向け、日本サッカー発展の歴史はすでに動き出している。(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)