ベスト8が出揃ったカタール・ワールドカップ。4強入りをかけた熱きバトルに世界中のフットボールファンが注目している。本稿では、現地時間12月10日に行なわれる準々決勝のイングランド対フランスを展望する。

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「最も面白い」という声もある準々決勝で最注目のカードだ。

 フランスは前回王者で、イングランドは4位。両チームとも今大会はラウンド16までの戦いぶりも順調で、コンディションも良好だろう。

 過去の対戦を振り返ると、実はイングランドが17勝5分9敗と大きく勝ち越している。ただ、長い歴史の中でフットボールの母国イングランドが先行していた事情もあり、その数字通りに現在のチームを単純比較はしにくい。

 直近では2017年に親善試合でフランスが3-2と勝利しているが、W杯となると1982年スペイン大会まで遡る。その時はイングランドが3-1で勝利しているが、一次ラウンドだった。ノックアウトステージの準々決勝で伝統ある両国が相まみえる自体がレアケースであるだけに、世界中のサッカーファンの視線が注がれることは間違いない。

 イングランドもフランスも4-1-2-3で、前者はハリー・ケイン、後者はオリビエ・ジルーという大型FWを擁している。フランスは左のキリアン・エムバペと右のウスマンヌ・デンベレがどちらからでも仕掛けられるが、やはり右のデンベレはチャンスメイカー、左のエムバペはフィニッシャー色が強い。
 
 ただ、そのイメージで対応しようとすると、逆の関係からもゴールを狙ってくるので、どちらかというと攻撃的なイングランドの左右SBは注意が必要だ。

 前線のスタメンがほぼ固定しているフランスと違い、イングランドはラヒーム・スターリング、フィル・フォデン、ブカヨ・サカ、マーカス・ラッシュフォードの4人がスタメン候補でもジョーカー候補でもあり、それぞれ特長やリズムも違うだけに読みにくい。

 フランスのSBは左が兄のリュカ・エルナンデズに代わり、主力を担うテオ・エルナンデズ、右がバルセロナ所属のジュル・クンデか、190センチのアクセル・ディサシだ。守備面の安定強化を考えて、モナコでディフェンスを統率するディサシを起用するかもしれない。

 中盤も両国ともにタレント力が高い。イングランドは19歳のジュード・ベリンガムが経験豊富なジョーダン・ヘンダーソン、デュエルに強いデクラン・ライスと上手く絡みながら、ボール奪取、起点のパス、飛び出しなど、万能性の高さを示している。一方のフランスも、本来FWであるアントワーヌ・グリーズマンが二列目からチャンスメイクを担い、相棒のアドリアン・ラビオが迫力ある攻撃参加を見せる。

 イングランドはハリー・マグワイアとジョン・ストーンズ、フランスはラファエル・ヴァランヌとダヨ・ウパメカノと、両国とも屈強なCB陣が構える。基本的には攻撃の主導権を握った側が有利に立てるが、ケインとエムバペという一発のチャンスに一振りでゴールを決めてしまえるエースの存在が、逆に予想を難しくする。

 非常に堅い試合になるのか、それでもオープンな流れで撃ち合いになるのか。結果的に延長戦やPK戦での決着になってもおかしくないが、試合の入りが大きな鍵を握りそうだ。

文●河治良幸

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