【識者コラム】決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表に敗北、PK戦負けに英記者が持論
森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦。1-1のまま延長戦で決着が付かず、PK戦で1-3のスコアで敗れた。初のベスト8入りはまたも叶わなかったなか、かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏はこの敗北を「日本の失敗」と見ている。
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再びチャンスを棒に振る結果となってしまった。またもやPK戦での失敗だ。これは日本サッカーの良くない習慣になりつつある。
それは2010年南アフリカ大会のパラグアイ代表戦のようであり、2015年のアジアカップのUAE(アラブ首長国連邦)代表戦のようでもある。120分間の戦いを終えた選手たちが円陣を組んだ時点で、すでに勝者が決まっているかのようだ。そして、その勝者が日本である可能性は決して高くはない。
サムライブルーは恐怖に支配されていた。クロアチア戦の前日に長友佑都が発した言葉は忘れ去られた。そこには「コラッジョ(イタリア語で勇気)」もなければサムライ・スピリットもなかった。代わりにあったのは、嫌な緊張とPKの失敗だった。森保一監督はクロアチアのGKドミニク・リバコヴィッチを称賛したが、実際のところあれは日本の失敗だ。
日本がノックアウトラウンドへの貴重な出場権を獲得した瞬間から、この試合は勝敗が決まっていた。クロアチアは決勝に進出した2018年のロシアW杯からズラトコ・ダリッチ監督の下でほとんど進化をしていなかった。むしろマリオ・マンジュキッチがいなくなったことで、間違いなく弱体化していたと言えるだろう。
そのメッセージはサムライブルーにも伝わっていたようだ。日本はこのカタールに来て初めて素晴らしいスタートを切った。グループステージでの日本の特徴となっていた守備優先のアプローチはほとんど見られなかった。それどころかアジア予選での戦いぶりを忠実に再現していた。
前半43分に生まれた先制ゴールは当然の結果だった。その2分前に鎌田大地が決めていてもおかしくないシーンもあったが、前田大然が得点を挙げたことに驚きはなかった。彼は非常にエネルギッシュで、カタールW杯における日本の傑出したパフォーマーの1人だったからだ。
しかし日本は、ハーフタイムが明けると徐々に、そして着実に試合の主導権を失っていった。イバン・ペリシッチの見事なヘディングシュートは徐々に優勢になっていったクロアチアへのご褒美だった。
日本はよりカウンター重視のアプローチをとり、チャンスといえば遠藤航がイチかバチかで放ったミドルシュートくらいだった。そのなかでルカ・モドリッチのシュートを防ぐなど権田修一の鋭い反応は必要不可欠なものだった。
終盤にはボールを支配する時間が増えた日本だったが、突破口を開くことはできなかった。延長戦も同じような展開で、ゴールを決められる選手がいない2つのチームの戦いはPK戦に突入する可能性が高くなった。
「日本サッカーにはまだまだやるべきことがある」
そして、日本は予期せぬ形で過ちを犯してしまったのだ。
森保監督はPKのキッカーとその順番を選手に任せたことを明らかにした。それがいけなかった。
南野拓実が勇気を出して最初のキッカーを務めたことは称賛されるべきだ。しかし、森保監督でもキャプテンの吉田麻也でも誰でもいいから、他の選手に蹴らせるように言うべきだったのだ。
南野はここ最近調子を崩しており、日本代表の先発メンバーから外れていた。最初はリバプールで、そして今はフランスのASモナコでフリンジプレーヤーとなっている。このPK失敗も、自信の問題だったのではないだろうか。
この最初のミスがそのあとの流れを作った。2人目の三笘薫もリバコヴィッチのファインセーブに阻まれ、そこで試合の行方が決定的になったのは言うまでもない。マルコ・リバヤのキックがポストを叩いて日本にかすかな望みを与えた時でさえ、逆転する気配は感じられなかった。
そして、夢は終わる。苦悩は消えず、準々決勝進出のための努力は続く。また新たな4年間が目の前にあるのだ。この新たな“ドーハの悲劇”は、29年前のオリジナルと同じくらい拭い去ることが難しいかもしれない。
日本サッカーにはまだまだやるべきことがある。スペインやドイツに勝っても、勝算がある試合でこそ進歩がなければ意味がない。コスタリカ戦での敗戦がその問題を浮かび上がらせ、クロアチア戦がそれをより強調する結果となったのだ。(マイケル・チャーチ/Michael Church)