エリア内で転倒もノーファウル判定となったジャッジを検証

 スポーツチャンネル「DAZN」の判定検証番組「ワールドカップ(W杯)ジャッジリプレイ」で、ウルグアイ代表とガーナ代表が対戦した試合が取り上げられた。

 この場面は後半アディショナルタイム、ウルグアイのFWエディンソン・カバーニがペナルティーエリア内に左45度方向から切り込んだところ、ガーナのDFアリドゥ・セイドゥとの接触で倒れた。主審はノーファウルと判定し、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の介入もなかった。

 試合状況は、ウルグアイがグループリーグを突破するためにはもう1点が必要な場面だった。この場面に対しては、ゲスト出演した現役時代に川崎フロンターレなどでプレーした鄭大世氏と元日本代表FW佐藤寿人氏が激しい議論を交わした。

 鄭大世氏は「この試合は前半にガーナにPKがあり、VARが介入してGKが滑ったところに両足ジャンプでPKが取られた。映像で見てもノーファウルなはず。だから揉めた。カバーニは(ファウルを)誘っている。DFは誘っている相手に乗ってはダメ。でも、これは乗ってしまっている。ファウルを取られてもおかしくない。前半のジャッジがあると、これはファウルを取ってあげないと1試合を通して可哀そうではないか」と話した。

 佐藤氏は「時間帯や状況を考えても、もったいないカバーニの判断。この場面で主審を欺く必要はなかった。右サイドに2人フリーな選手がいて、プレーを続ける意思があればもっと得点につながるプレーや選択肢が取れた。安易に右足を相手の前に出した。まったくボールに対して自然ではなく不自然にプレーした。ボールから離れる一歩をすることで身体を入れるのは、主審からすると『こういう欺きには乗らないよ』という正しい判断だったと思う。ちゃんとプレーを選択していれば、次のプレーで得点になったかもしれない。最終的にはカバーニの判断ミス」と、ノーファウルの判定を支持した。

 鄭大世氏は「僕は相手に身体をぶつけてボールを確保するタイプ。誘いに行ってはいるもののカバーニのプレーはそこまで悪くないけど、ガーナの選手も接触したあとに一緒に倒れている。誘いに乗ってしまったガーナの選手も取られてもおかしくないと判断した」としたが、佐藤氏は「互いに前に進行している時に、セイドゥの進行方向の前に右足を入れれば接触する。それは普通の人間の動作。カバーニは一目散にボールに寄って折り返して味方に次の選択を与えないといけない。僕は、ストライカーとすれば見たくないプレー。並走してセイドゥの前のスペースに足を入れた。その必要はない。ボールが前にあるから」と、コメントしている。

佐藤寿人氏「結局、欺こうとする選手はこうなる」と指摘

 また鄭大世氏は「最初の伏線があった時に、そのレフェリングを基準にすればファウルを取る。でも、審判の経験と印象としては取らないという矛盾がある。今回はその基準に従うなら、ファウルであるべき。最初に明らかなダイビングをファウルにしてしまっている」と、1試合の中での判定基準の一致をポイントにした。

 対して佐藤氏は「ストライカーには欺こうとする選手もいる。ただ、主審の目を欺こうとしたら、それを見られる主審には正しく判断されてゴールは奪えない。僕は、ここはしっかりプレーするだけで良かったと思う。主審を欺こうとしたカバーニが罰を受けた」と話したが、鄭大世氏は「レフェリーはサッカーを理解していて『これはもらいに行ったから取らないよ』と。でも、前半のは完全に欺いていた。絶対に取られるべきでないPKをVARの介入で取った」と見解を述べた。

 一方で佐藤氏は「(カバーニは)そういうのも待っていたと思う。前半にそういうのがあったから、後半これでプラスマイナスゼロにしてくれるんじゃないかと。それがそもそもダメ。そんなものは存在しないし、さっきこういうジャッジだから、次にこうしてくれというのはあくまでも選手側のニュアンス。主審はそんなことを考えずに笛を吹いて判断する。最後のアディショナルタイムでこれだけ身体が前に出て、しかもカバーニの能力なら折り返して逆サイドにチャンスをつなげられる。それをしなかった。(つじつま合わせは)そういう人もいたかもしれないけど、そうであってはいけない。結局、欺こうとする選手はこうなる」と熱弁を振るった。

 元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏はこのプレーについて「自分からコンタクトを誘発するイニシエートの代表的なシーン」としたうえで、レフェリーのポジショニング次第で誤認識する可能性はあるが、良いポジションにいたとして「Jリーグでもこういうシーンはできれば見たくないし、仮にあったとしてもレフェリーには誤認識せずにイニシエートと見極めてほしいもの」と話した。

 また、試合終了後にカバーニが判定に猛抗議し、ピッチ外のVARモニターを殴り倒してしまった。これについて鄭大世氏は「今はVARが介入する力があるのだから、あれはレフェリーを殴るのと同じ」とコメントしていた。(FOOTBALL ZONE編集部)