現地時間12月10日のカタール・ワールドカップ準々決勝でイングランド代表を2-1で破り、準決勝進出を決めたフランス代表。攻撃陣では2アシストを記録したアントワーヌ・グリーズマン、相変わらず異次元のスピードを見せたキリアン・エムバぺももちろん素晴らしかったが、個人的に最も惹かれたのがヘディングで決勝点を挙げたオリビエ・ジルーだ。
そもそもは代役だった。2022年のバロンドール受賞者であるカリム・ベンゼマが大会直前に左太腿を痛めて戦線離脱。本来はその控えだったジルーがCFのレギュラーに格上げされた格好となった。
しかし、カタールW杯でここまで見せているパフォーマンスは、「ベンゼマの代役」という肩書き以上のものだ。
まず傑出しているのが献身。身体を張って最前線でポストプレーを行ない、グリーズマンやエムバペにスペースと時間を提供する。また、実質的に守備免除のエムバペの分まで走ってプレスにも奔走する。ここまでの守備プレッシャー179回はチームトップの数字だ。地味な仕事を粉骨砕身で遂行する。
さらに、決定力も発揮する。4年前のロシアW杯では7試合出場でアシストこそ2つあったがノーゴールに終わり、優勝に貢献したもののスポットライトは浴びなかった。しかし今大会はグループステージ1節のオーストラリア戦で2ゴールを挙げると、ラウンド16のポーランド戦(フランス歴代最多の通算52得点に到達)と準々決勝のイングランド戦でもそれぞれ1ゴール。ここまでの計4ゴールはリオネル・メッシと同数で、エムバペの5ゴールに次ぐ得点ランク2位タイだ。
チームのために常に献身し、重要なゴールも決めるその姿は、所属するミランでも見せているまさに本領。しかも36歳でこのパフォーマンスだからなおさら賞賛に値する。
ジルーにはベンゼマのような超一流の技術や創造性は備わっていない。しかしグリーズマンとエムバペを輝かせる献身はむしろ上回るし、今大会に限れば決定力も同等。戦術的にはフランス代表の大黒柱と言っても過言ではなく、もはやジルーに「ベンゼマの代役」というレッテルは相応しくない。
大躍進するモロッコ代表と対戦する12月14日の準決勝でも、レ・ブルーの背番号9には要注目だ。
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
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