監督にも難しさはある

今回のFIFAワールドカップ・カタール大会から登録メンバーが23人から26人に増えている。これは交代枠が3人から5人に増えたことによる影響であり、すでにクラブシーンで導入されている。最大5人の選手が変われば、チームの色も変わる。

日本はこの交代枠5枚を最大限に活用したチームの一つだろう。今大会のサムライブルーの特長は後半からギアを上げることであり、三笘薫をはじめとする強力なアタッカーを投入して得点を目指す。しかし交代枠が5枚あるとはいえ、全26人をピッチに送り出すことはなかった。

川島永嗣、シュミット・ダニエル、柴崎岳、町野修斗の4人が今大会では出番はなかった。GKは基本的に1人の選手を起用するため、珍しくはないが、柴崎や町野といったフィールドプレイヤーはどこかで起用しても良かったかもしれない。

英『The Athletic』によると、今大会代表メンバーに招集されるも、ピッチに立つことができなかった選手は全チーム合計でちょうど100人となるようだ。そのうち、すでに88人は敗退しており、イングランド代表のジェイムズ・マディソンやドイツ代表のカリム・アディエミが含まれている。

出場してピッチに立つことは重要だが、そうでなくともチームに貢献できる場合がある。

同メディアが紹介しているのは、W杯・ロシア大会を制したフランス代表DFアディル・ラミの例だ。

リーグ・アンのリールやマルセイユ、セリエAではミラン、ラ・リーガではセビージャと複数のクラブを渡り歩いた鉄人で、2018年にフランス代表としてW杯に出場している。

「私の役割はチームにポジティブな空気をもたらすことだ」

フランス代表はその大会で7試合を戦っているが、ラミの出番はなかった。ただチームを支えるベテランは良い空気をチームに送り込もうという気持ちでW杯に臨んだようだ。ただその気持ちが強すぎたのか、準々決勝ウルグアイ戦の前にはラミがふざけてチームメイトに消火器を射出し、ホテル内にいる従業員や選手たち、ディディエ・デシャン監督も外に避難する事態にまで発展してしまった。「ゴーストバスターズみたいだった」とラミはのちに話しており、底抜けた明るさを見せた。

デシャンは当時のラミを良く思っていなかったようだが、チームの雰囲気をネガティブにするよりもムードメイカータイプの選手がいたほうがずっといい。

「必ずしもベストな23人を選ぶ必要はない。ロシアでは何人かの選手はプレイしない。まだ誰かは分からないが、いずれにせよそうなると思う。サッカーの資質は不可欠だが、社会性やチームスピリットも重要だ」

W杯・ロシア大会前にデシャンはメンバー選考に関する持論を述べている。それこそカタールで出番のなかった町野だが、代表内で町野がムービーメイカーとしてチームに貢献していたと伝えられている。

W杯ではピッチ内にスポットライトが当たりがちだが、ピッチ外でも重要なことは多い。とくに雰囲気作りは重要であり、ギスギスした雰囲気では勝てる試合も勝てない。出番のないメンバーにも役割はあり、大会終了後にはそういった選手に何かスポットライトが当たる機会があるかもしれない。