【カメラマンの目】与えられた役割を理解し、結果を掴んできた過去の試合を振り返る
少し前の話になるが2018年2月16日オランダリーグ1部の第24節VVVフェンロ対フローニンゲン戦。この試合、堂安律はフローニンゲンの選手としてプレーし、左サイドを主戦場にチャンスを作り前半15分にゴールをマークする活躍を見せた。
同じ日本人として当然、堂安のプレーに注目していたのだが、ゴール裏から見ていて堂安は仲間の中盤の選手たちと比較して、攻撃に専念しているように感じられた。そのことを試合後に質問してみると、こういう答えが返ってきた。
「今日の左サイドはあまり戦術に嵌めないようなディフェンスで臨んだ。左サイドバックの選手(ヨエル・ファン・ニーフ)がもともと1対1に強いセンターバックの選手だったので(ケアを任せ)攻め残りのパターンが多かった」
当時、なるほどと納得した。堂安を中心に戦うという戦術だったわけだ。結果は1-1の引き分けに終わったが、堂安は期待通り、特別に与えられた役割を最大限に活かし、チームを牽引しゴールという結果を出したのだった。
しかし、こうしたひとりの選手が能力を発揮しやすい得意のプレーだけに専念できる状況は、まったくないとは言わないがかなりのレアケースだ。
現代サッカーにおいて1人の選手がこなす役割は多岐に渡る。自分の得意のプレーだけをやっていれば良いという時代ではない。言ってしまえば本来のポジションとはまったく逆のポジションのプレーを課されることも珍しくない。それが現代サッカーの宿命である。
カタール・ワールドカップ(W杯)を戦った日本代表は、グループリーグで同組となった世界屈指の強豪国であるドイツ代表とスペイン代表に対して、チームを構成する全選手が高い守備意識を持って臨んでいた。なにより選手たちはフォア・ザ・チームの精神で戦った。
そうして迎えた初戦のドイツ戦。ベンチスタートから始まった堂安は与えられたプレー時間と役割をこなし、そのなかでチャンスを確実にモノにしていった。結果、4試合で2ゴールをマークする活躍を残した。
強豪クラブへの移籍話も聞かれる堂安だが、W杯という大舞台は彼にとってさらなるステップのチャンスを引き寄せる大事な経験となったことだろう。そしていつの日かビッグクラブに移籍した堂安が、そのチームにとって特別な存在になっているところを見てみたいと思う。(FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)