【識者コラム】カタールW杯で大きく評価を高めた各国のタレントを紹介

 熱狂のカタール・ワールドカップ(W杯)が閉幕し、欧州の主要リーグでは早くもシーズンが再開している。気になるのは冬の移籍市場だ。カタールW杯で大きく評価を高めた選手は多額の移籍金を残して、より大きなクラブへとステップアップを果たすかもしれない。

 ここでは代表的な7人をピックアップ。すでにドイツ1部ボルシア・ドルトムントに所属するイングランド代表MFジュード・ベリンガムにもビッグディールの噂は出ているが、大会前から注目を集めていた逸材ということで、今回は対象外とした。

■ヨシュコ・グバルディオル(DF/クロアチア代表/ライプツィヒ)

 鼻骨骨折による黒マスクが話題になったが、まだ20歳という事実がにわかに信じ難い屈強なフィジカルとスピード、対人能力を備えており、左利きながら右足でミドルパスも出せる。前方に隙があれば積極的に持ち上がってチャンスの起点になるなど、インパクトは絶大だった。準決勝ではアルゼンチン代表FWリオネル・メッシにぶち抜かれる“洗礼”を受けたが、ここからの成長の糧になるかもしれない。すでにライプツィヒというドイツの強豪クラブに所属するが、プレミア移籍が有力視される。

■エンソ・フェルナンデス(MF/アルゼンチン代表/ベンフィカ)

 グループ3戦目のポーランド代表戦からスタメンのチャンスをもらうと、FWフリアン・アルバレスのゴールをアシスト。さらに抜群の展開力で中盤の底からチャンスを構築し、守備では広範囲をカバー。決勝のフランス代表戦でも延長戦でメッシが決めた3点目につながるスルーパスをアルバレスに送った。決定的な仕事も目を引くが、攻守の安定感が素晴らしく、最優秀若手賞も納得の受賞だ。一部報道ではイングランド1部リバプールへの移籍を希望とも伝えられるが、ポルトガル1部ベンフィカもCL(UEFAチャンピオンズリーグ)のラウンド16に進出しているだけに、今後の動向が注目される。

■アゼディン・ウナヒ(MF/モロッコ代表/アンジェ)

 才能を見出したバヒド・ハリルホジッチ前監督の”置き土産”とも言うべき逸材。アフリカ初のベスト4という大躍進を果たしたモロッコの中盤でひと際、ボール捌きのうまさを見せて、カウンター主体の攻撃にクオリティーとアクセントをもたらした。まるで手先で扱うようなドリブルは激しいプレスをものともせずに、むしろ相手の勢いを利用して逆を取ってしまう。伸び盛りの22歳。アンジェが現在リーグ・アンの最下位にいる状況もあり、多額の移籍を残してプレミアリーグに旅立つ可能性が高い。

モロッコ躍進の最大の功労者は、リバプールから関心との噂も

■ドミニク・リバコビッチ(GK/クロアチア代表/ディナモ・ザグレブ)

 日本代表、ブラジル代表とのPK戦で大活躍して評価を高めたが、好パフォーマンスはPKにとどまらない。安定したバックパスの処理やフィード、ハイボールの対応など、流れの中でも存分に存在感を示した。準々決勝のブラジル戦では延長戦の後半アディショナルタイムに、MFカゼミーロのシュートをビッグセーブしたことがPK戦につながった。オフに負傷したドイツ代表GKマヌエル・ノイアーに代わり、ドイツ1部バイエルン・ミュンヘンが獲得に乗り出すという報道もあったが、プレミアリーグ移籍が取り沙汰される。

■ソフィアン・アムラバト(MF/モロッコ代表/フィオレンティーナ)

 強さと柔らかさを兼ね備えた中盤の狩人。モロッコ躍進の最大の功労者との評価も高く、英紙「デイリー・メール」ではイングランド1部リバプールからの関心が伝えられている。直接的なボール奪取やセカンドボールの回収から正確なファーストパスでカウンターの起点に。短い時間ながらモロッコがポゼッションでボールを動かす時間帯でも、正確な技術と的確な選択が目を引いた。26歳という年齢ではあるが、ビッグクラブでも十分に即戦力になるだろう。

■ゴンサロ・ラモス(FW/ポルトガル代表/ベンフィカ)

 ラウンド16のスイス代表戦で、FWクリスティアーノ・ロナウドに代わりスタメン出場。ノックアウトステージでは同国最年少の得点記録を更新するなど、ハットトリックで期待に応えた。準々決勝でモロッコ代表に敗れたポルトガルだが、その中で最も評価を上げたアタッカーだ。ポルトガルリーグの前半戦で9得点をマークしており、21歳でここからの伸びしろも十分。MFエンソ・フェルナンデスと同じく、ベンフィカがCLのラウンド16に勝ち上がっていることもあり、今冬に動くのか、シーズン終了まで待つのかはオファー次第だろう。

■コーディ・ガクポ(FW/オランダ代表/PSV)

 オランダ代表はアルゼンチン代表との準々決勝でPK戦の末に涙を飲んだが、グループリーグ3試合で得点を上げるなど、23歳のアタッカーは確実に評価を高めた。193センチというサイズながら柔軟性があり、2列目でもプレーできる。流れに応じてフィニッシャーにもラストパスの出し手にもなれる選手だ。空中戦で武器になる高さを考えると少々勿体ないが、セットプレーのキッカーとしても優れている。その成長ぶりには元同僚のMF堂安律も驚きを隠さないが、プレミア行きか、それとも……今後の移籍市場で最も注目を集めるタレントの1人かもしれない。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)