11月20日から12月18日(現地時間)にかけて繰り広げられたFIFAワールドカップカタール(カタールW杯)。サッカー日本代表はベスト16で敗退するも、着実な進歩も見せ感動を呼んだ。

日本がW杯初出場を果たした24年前。1998年フランスW杯では海外でプレーする選手はメンバーにおらず。今カタールW杯では、26選手のうち19選手が海外チームに所属しているという変化も顕著だ。日本人選手のクオリティは確実に上がっている。しかしながら、ベスト8進出の壁はまだ高かった。

ここでは、日本代表のカタールW杯におけるエピソードを総括しながら、このW杯ベスト8に進むために必要なことを考察してみたい。


日本代表カタールW杯の総括。ベスト8に必要不可欠なJリーグの成長
カタールW杯 組み合わせ抽選会 写真:Getty Images

組み合わせ抽選会

2022年4月2日(以下、日本時間)。カタールW杯出場を決めた日本は、はやくも重要な局面を迎えていた。W杯が開催されるカタールで実施されたのは、グループリーグ抽選会。FIFAランキングの順位によって決まるポット分けで、当時23位だった日本はポット3に位置付けられた。

ポット1から抽選が進み日本の番となった時、グループリーグ突破の確率を上げるためには明確に避けたいグループがあった。優勝経験国でカタールW杯の出場権を掴んだ7か国のうち、スペインとドイツが入ったグループEだ。

抽選の結果は、言わずもがな。世界中の多くのサッカーファンや専門家が、突破する国はドイツとスペインだと断言し、2強2弱のグループと呼ばれることとなる。


日本代表カタールW杯の総括。ベスト8に必要不可欠なJリーグの成長
日本代表 写真:Getty Images

ドイツ戦とスペイン戦で起こしたサプライズ

しかし森保一監督は、抽選会以前と同様に「目標はベスト8」と断言。11月23日の本大会グループリーグ第1戦ではドイツと、12月2日の第3戦ではスペインと対戦。どちらも前半に先制を許したものの、後半に逆転を向けたスイッチを入れると、立て続けに得点を挙げ逆転勝利を果たした。

1度だけでなく2度も世界を驚かせた日本。コスタリカには敗れたものの、グループリーグの1位で突破を決めることに成功した。


日本代表カタールW杯の総括。ベスト8に必要不可欠なJリーグの成長
日本代表 写真:Getty Images

ドイツ戦とスペイン戦の代償

だが結果としては、この組み合わせがベスト8を遠ざけることにもなった。最終的に優勝したアルゼンチンが、初戦でサウジアラビアに不覚をとったことが代表的であるように、上位に進出するチームの多くは初戦に向けては100%まで仕上げない。試合をこなしながら、決勝トーナメントに向けて少しずつコンディションを上げていく。

一方の日本は、初戦からいきなり大一番となるドイツ戦。この一戦に向けて心身ともに仕上げなければならなかった。その甲斐あって勝利を挙げたものの、スペイン戦も含め2度の大一番を迎え、ベスト8をかけたクロアチア戦の前にピークを合わせなければならなかったことが痛かった。

もう少しボールを保持する時間帯を作ったり、圧倒的な個を持つ三笘薫を攻撃的な位置でプレーさせたり、といった戦術的な課題はもちろんある。しかし組み合わせ次第では、ピークをずらすことで次のW杯ベスト8進出の可能性を上げられるだろう。

日本代表カタールW杯の総括。ベスト8に必要不可欠なJリーグの成長
日本代表 写真:Getty Images

32か国中9位

12月19日にFIFAが発表したカタールW杯に出場した全32か国の最終順位で、日本は9位となった。2勝1分1敗(90分終了時のためクロアチア戦は引き分け扱い)で、ベスト16となった国の中ではトップである。この結果を見ると、余計にベスト8まであと1歩だったと実感できるだろう。

ただ、実は日本が9位となるのは初めてではない。2010年に行われた南アフリカW杯。この時はグループリーグでカメルーンとデンマークに勝ち、オランダには敗れ、決勝トーナメント1回戦でパラグアイにPK戦の末に敗れて2勝1分1敗だった。

結果だけをみると、今カタールW杯の結果は12年前と変わっていないように見える。しかし、相手の自力は明確に異なる。今回はスペインとドイツに勝利し、最終的に3位となるクロアチアにPK戦の末敗退。目標の達成とはならなかったものの、日本は着実に進歩しているといえる。


日本代表カタールW杯の総括。ベスト8に必要不可欠なJリーグの成長
Jリーグ旗 写真:Getty Images

ベスト8以上に向け欠かせないJリーグの成長

カタールW杯の日本代表26人のうち、海外でプレーする選手(海外組)は19人。Jリーグでプレーする選手は7人と少数派となった。だが、日本がW杯でベスト8、さらにベスト4以上へと進むには、Jリーグの成長が欠かせないだろう。

日本人選手が海外に移籍するまでの道のりは、大まかにわけて2通りある。Jリーグでプレーしたのち移籍するか、高校や大学を卒業するタイミングで直接移籍するかだ。カタールW杯の海外組19人は、その全てが前者。Jリーグでプレーして一定の実績を積んだのちに海外、それも欧州のリーグへ移籍した選手だった。

Jリーグは世界トップレベルのリーグでは決してないが、近年の成長は著しい。欧州の各リーグと大きな差があった強度も、大幅に改善されつつある。Jリーグで経験を重ねた選手たちが欧州の各リーグへ移籍することで、日本代表の競争は激化し強化へと繋がる。強豪国はいずれも自国のリーグのレベルが一定以上あり、ベスト8以上に進むためにJリーグの成長は欠かせない。