「焼け残っていたのを、これはお父ちゃんのに変わりはないと娘も言いまして、そして持って帰った」(夫のカバンと帽子を寄贈した松井たかさん)
「見ようと思えばここに来れば見られるわけだから、みなさんの役に立つと思えばいいと思う」(佐々木禎子さんの折り鶴を寄贈した男性)
「(寄贈するか)悩んだが、私も90歳になるから。戦争はひどいことだなと見てもらえたら」(姉の遺品を寄贈した萩本トミコさん)
被爆から80年経った今でも、年間数百点が寄贈される。そのうち、館内で展示されるのはほんの一部だ。多くは資料館地下の収蔵庫で保管されている。その数は2万点以上。保存に適した温度や湿度に調節され、普段は人の立ち入りもほとんどされない。
遺品は遺族の嘆きであり、死者の叫びであり、決して繰り返してはならないというメッセージだ。原爆資料館は、展示室であると同時に、死者の叫びの巨大な保管庫でもある。
劣化が進む遺品「カードケース」の再現
